Petunia 〆

Petunia 〆

匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
通報


募集板でお声がけくださった方をお待ちしております。



コメントを投稿する

  • No.683 by ギデオン・ノース  2023-12-01 00:20:34 




っく、っくく──ああ、いや、いや。
お前がそう思うなら、それでいいんじゃないか。……なあ?

(ずっとギデオンに怒っていたはずの恋人が、いきなりぱあっと、やけに顔色を明るくしたもんだと思ったら。「ふふん、どうです! 言い返せないでしょう!」なんて言わんばかりのご尊顔で、とんでもない事を堂々と抜かしてくるのだ。ギデオンは一瞬、はたと虚を突かれた顔で静止し……かと思えば次の瞬間、思わず目尻をくしゃりと歪め、口元に拳を当て、明後日の方を向いてしまった。片方の手こそ朝食のために動かし続けているものの、その様子はどこから見ても、笑いを堪える有り様である。
──いやはや全く、本気でどうしてくれるつもりだ。己は曲がりなりに、肉体的にも精神的にも、きちんと成熟した女性を好んでいたはずなのだ。それがどうして、ヴィヴィアンは……いや、無論彼女とて、どちらも充分大人びた、一人前の女性であるが。それにしたって、時々自分の前でだけ、どうしてこうも殺人的にあどけなくなる。己の中の嗜癖の形が、めきめき歪んでいくではないか。責任をとってもらいたいのは、むしろよっぽどこちらの方だ。だというのにこの娘は、こんな得意満面の顔で、途方もない告白を無自覚にかましてみせて──。
そんな愉快さに耐えかねての沈黙も、長く続ければ新たな火種になり得るだろう。喉仏を未だ低く震わせつつ、きちんとそちらに向き直り、“気にするな”というように、ひらひらと手を振って。やけに含みのある言い回しで、相手の言葉を面白そうに肯定すれば、胡乱気なエメラルドの目を向けられるやもしれないが。グリルからきつね色のパンを二枚取り出せば、相手の顔がまたぱああっと無邪気に輝きだすのだから、また必死に発作を堪えて。
……そうして、いよいよ己も食卓につき。簡単な祈りを捧げてから、ふたり一緒に今日もまた、同じ朝餉を取り囲む。他愛ない会話をして、仕事のあれこれを共有して。そんないつも通りの朝を過ごしながら──次はいつ、ヴィヴィアンを抱けるだろうかと。そんな不埒なことを腹の内で考えていたのは、ここだけの秘密である。)

(──さて。それからの数日間は、ごく平和に過ぎていった。先日あれだけの大騒ぎを引き起こしたヴィヴィアンの父、ギルバートだが。やはり帰国時の無理が祟ったらしく、一日のほとんどを眠り通しているらしい。一応はヒーラーなり魔法医なりが、交代制で24時間傍についているとのことで、「心配は全く御無用」とギルマスのお墨付きである。……人件費が随分飛んでいるはずだが、何せ相手がVIP中のVIPだ、カレトヴルッフとしては政治的な意図もあるのだろう。ギルバートが休息している間、代わりに魔導学院と連絡も取ったようで、この騒動の諸々の懸念は、一旦綺麗に保留されたことになる。
それを崩すきっかけをもたらしたのは、隣のマーゴ食堂だ。その日の朝、カレトヴルッフのギルドロビーには、夜明けの酒を残した酔いどれ連中がぐうたらとたむろしており。とうとうマリアに見咎められ、説教役にギデオンも呼ばれて、ふたりしてこんこんと、 “国内最高ギルドに勤める冒険者としての心得”を説き聞かせていた、その真っ最中。「──ちょっとあんたたち、人手足りてる!?」と血相変えて飛び込んできたのは、マーゴ食堂のベテラン従業員こと、ヨルゴスの妻アンドレアだった。「ねえ、大変なの! うちのテッポ爺さんが──リブステーキを5切れも残して帰ったの!」
一体それのどこが大変なのだ、と不思議そうに首を傾げたのは、まだ年若い、二十半ばかそこらの奴らだけだったに違いない。年季の入ったベテランたちは、皆一斉に顔色を変え。酔っぱらっていた親父どもすら、ぎょっと正気を取り戻した。装備は!? 馬は!? ホセのバカは今どこにいる──アリスのパーティーを連れ戻してこい! こんな具合で、“国内最高ギルド”のベテランたち全員が、一気に臨戦態勢である。
騒ぎを聞きつけて医務室から飛んできたヴィヴィアンと、その周りに集った若者たちに、ギデオンのほうからわけを話すことにした。──“マーゴ食堂のテッポ爺さん”というのは、実はカレトヴルッフにとって、恐ろしい占い師なのだ。といっても、本人にその自覚はない。少なくともギデオンが子どもだった30年以上前から、そこらをふらふら浮浪している、ただのぼけた爺さんである。けれども、マーゴ食堂のマーゴ婆さんとは何か縁があるようで。毎日一食、どんなメニューでもただで振る舞って貰えるという温情にあずかっており、ほとんど毎晩マーゴ食堂に通いつめ、隅っこの方の席で、いつも慎ましく日々の食事を楽しんでいた。マーゴ婆さんの懐の広さの素晴らしいことといったらないが、テッポ爺さんもテッポ爺さんで、ぼけていて尚礼儀正しく穏やかな、非常に気のいい人物であるから、食堂の常連であるカレトヴルッフの冒険者たちも、皆彼を気に入っている。ベテランたちで日々代わる代わる、独り者の爺さんの相席をしに行っては、爺さんの痴呆によって上手く噛みあわない頓珍漢な会話を、それでものんびり楽しんで過ごす……そんな伝統があるほどといったら、どれほどの関係か想像がつくだろう。──しかし、問題がただひとつ。歳のわりに健啖家、おまけに店主マーゴさんに対する恩もあって、普段は決してパンくずひとつ食べ残さない爺さんが。それでも「気分が悪くてのう……」などと、何かを残してしまうとき。それはすなわち、“非常に厄介な魔獣が王都付近に出没する”という、揺ぎ無いジンクスがあるのだ。チキンのグリルを残すなら、ステュムパリデスの群れの飛来。フライドポテトを残すなら、大型ヒュドラの毒霧拡散。──そして、リブステーキを4切れでなく、5切れも残したというのなら……それはすなわち、この人口豊かな王都のそばに、ドラゴンが出るということだ。戯けた迷信と思うかもしれないが、ぼけた爺さんの食べ残しがたしかに災いを予言することを、ギデオンたちベテランは皆、その数十年の経験をもって、真実であると知っていた。しかもたちの悪いことに、爺さんの予言というのは、間隔が開けば開くほど、次の被害が大きくなると示す性質を帯びている。ここ4年ほどは毎日欠かさず食べきっていたはずだから……それが久々に破られた、しかもこれまでの法則からして今回はドラゴン、となると。そりゃあもう、ベテランたちが慌てふためくのも無理はない、というわけだ。
この話を聞いて尚、いまいちピンと来ていない若者たちに、本当なのだと告げるが如く。カレトヴルッフのエントランスに、いきなりよそ者が──王軍の伝令兵が飛び込んできた。北の国境警備隊から、国外のドラゴンが侵入したとの報が入り。軍の各所が引き継いでその個体を監視したところ、キングストン近郊の森に降り立った、との話である。詳しく聞くに、ドレイク種──つまり、空陸水全てを駆ける万能型ドラゴンで、黒い胴体、赤い翼、多頭という特徴から、ヴァヴェル竜と目される。途端に、ベテランたちは皆一斉に、「やっぱりか!」と呻き声をあげた。ヴァヴェル竜は土属性のマナと反発する体質ゆえ、地上で少し暴れただけで、大破壊を引き起こす。つまり、並みいるドラゴンたちの中でも、地に足つけて生きている人間が戦うには、非常に分が悪い相手なのだ。一応は外来竜なんだから王軍が処理しろよ……と、誰かが文句をつけようとするも。そこは事態をまとめにきたギルマスが、視線ひとつで黙らせた。カレトヴルッフは王室からの信頼も厚いギルドだが、だからこそ、王軍と揉めてしまうのは宜しくない。体良く現場処理を擦り付けられた感は正直否めないものの、ここはひとつ。職務を果たして恩を売り、今後の切り札にしてしまおう、という目論見である。
そんなこんなで、通常の雑務諸々を返上しての、大掛かりなドラゴン狩りが決定した。と言っても、ギルドを空にしては他の有事に備えられないので、今の人出の半分は、王都に残ることになる。その中で、ベテラン戦士のギデオンはともかく、まだ大怪我から復帰したばかりのヴィヴィアンは、留守番組に回されるものだろう、とてっきり思っていたのだが。「──そうだ、そこのバカップル! お前らも現場に来てくれ!」と、今回の隊長であるヨルゴスに声をかけられ。並んで立っていたふたり仲良く、「「?」」と同時に、自分たちの背後を振り返ったものだから。途端、周囲から一斉に、「──だからそういうところだよ!!」「おめえら以外に誰がいんだよバッキャロウ!!」と、この忙しいのに総突っ込みを喰らうこととなった。何故なのだろう、酷く解せぬ。
──ヨルゴス曰く。今いる、もしくは呼び戻すことのできる魔法使いの面々だけでは、前衛の支援役が到底足りていない。故に、魔力の豊富なヴィヴィアンにも、その体調の許す限りで、どうしても活躍してほしいそうだ。地上の戦力は有り余っているから、いざとなれば肉盾になる戦士どもをしっかり護衛でつけさせる、と真っすぐな目で約束されれば。そこまで言うなら仕方ないか、とギデオンも飲み込んだ。
かくして、己の相棒、ヴィヴィアンにとっては、ほとんど3カ月ぶりの現場仕事である。周囲がやれドラゴン用装備だ、現場に物怖じしない馬だ、非常用の魔法薬だ、解体用の大道具だ、と慌ただしく準備する中。自身もドラゴン用の強靭な皮鎧に身を包んだギデオンは、やはりどうしても心配性が発動してしまうようで。東広場発の出動用馬車が間もなく出発する……という頃になってから、ロビーの人混みの合間を縫って、相棒のそばに行き。……おまえを軽んじるわけじゃないんだが、と、思い悩んだ目を向けて。)

……なあ。医者からはまだ完治を言い渡されてないんだし、復帰戦にしては、今回のはいきなり重過ぎるだろう。
もし少しでも、体調や魔力に思わしくないところがあるなら……ヨルゴスには俺からちゃんと説明して、代案も用意してみせる。だから、今からでも……



[PR]リアルタイムでチャットするなら老舗で安心チャットのチャベリ!
ニックネーム: 又は匿名を選択:

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字 下げ
利用規約 掲示板マナー
※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※必ず利用規約を熟読し、同意した上でご投稿ください
※顔文字など、全角の漢字・ひらがな・カタカナ含まない文章は投稿できません。
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください

[お勧め]初心者さん向けトピック  [ヒント]友達の作り方  [募集]セイチャットを広めよう

他のトピックを探す:1対1のなりきりチャット







トピック検索


【 トピックの作成はこちらから 】

カテゴリ


トピック名


ニックネーム

(ニックネームはリストから選択もできます: )

トピック本文

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字

※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください
利用規約   掲示板マナー





管理人室


キーワードでトピックを探す
初心者 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 部活 / 音楽 / 恋愛 / 小説 / しりとり / 旧セイチャット・旧セイクラブ

「これらのキーワードで検索した結果に、自分が新しく作ったトピックを表示したい」というご要望がありましたら、管理人まで、自分のトピック名と表示させたいキーワード名をご連絡ください。

最近見たトピック