匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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……っ、……はぁい。
そうですよ、全部ギデオンさんのせいなんですから、忘れないでくださいね。
( ぶっきらぼうな命令口調に、それまで此方を見つめていた瞳が、くるりと身体ごと逸らされる。乱れきった寝台の上、随分と心許ない格好をした娘は一人残されて。渾身の"かわいい顔"は不発で終わってしまったものの、この顔で駄目な時は本当にどうにもならないと知っている故、不満げに唇を尖らせながらも、素直にアッサリと引き下がる。目の前の恋人の、紳士ぶった冷静な仮面の隙間から、一瞬覗いた葛藤の色。昨晩までその一片も、故意に揺らがすことの出来なかった──と、少なくともビビはそう思いこんでいる──鉄壁の理性を思えば、その隠しきれなかった顔色だけでも充分だ。しかし、それに伴い唱えられた愛称に、昨晩の甘美な悪戯を思い出せば、再びふっと息を詰めさせられた仕返しに。それ迄まとっていたデュベを放り投げると、無防備に向けられた背中へ勢いよく飛びつき、その首筋、耳元へ軽いリップ音を響かせる。そうして、この限りなく幸せな状況を作り上げたのは、ギデオンの責任、もとい選択なのだと言い聞かせれば。相手が動じたかどうだったか、振り落とされでもしない限りは、「階段の下まで連れてって欲しいな~」等と可愛らしく甘えられたのは、やはりまだ寝惚けていた節も大きかったのだろう。
それから、四半時ほどたっただろうか。手段はいずれにしても、たどり着いたバスルームにて。朝起きた時から分かっていたつもりだったが、そこに備え付けられた姿見で、最早ギデオンの痕跡がない所を探す方が難しい己の惨状を目の当たりにしたヴィヴィアン嘆きといったら。いつも通りの装束にかっちりと身を包みながら、ダイニングテーブルに顔を埋めた娘は、彼女が何を怒っているのか要領を得ない恋人に、ここで初めてマジカルキスの視認性を説明することになる。そうして時折、羞恥に染まった頬を、冷たいグラスで冷やしながらも。この一年、嫌々ながらビビの相談に乗ってくれた魔法医はともかく、ギルバートがどう思っただろうか想像するに、しょんぼりと垂れた頭上で揺れる紅い耳までも、心做しか萎びて見える有様で。 )
──……本当に! 本ッ当にギデオンさんのせいですから!!
こんなんじゃパパに会えないじゃない……
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