匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( 仮に振り返ったとしてもギデオンの姿が見えなくなった頃合、海に出る前の囁きがやっと腑に落ちた顔のライターが「あーあ、帰ってきて怒られても知りませんよ」と、あえて場の士気を上げるために戯ければ、そんな理想的な明日を想像しては爽やかに微笑み「本望です」と、ギデオンなら絶対に実現させてくれると、祈るような気持ちで月光を反射する緑の目を細め、波の音に紛れて聞こえる嫌な唸り声に拳を強く握った。
島に近づき過ぎれば、より巨大な同質の魔法に吸収されて擬態が弱まる。とはいえ決定的な瞬間を捉えられなければ、危険を犯して記者たちについてきて貰った意味が無い。ギデオンにかけた盗聴魔法が届く絶妙な距離を操舵手に保たせながら、合流地点側の沖合でまんじりともせず波の音に息を潜めていれば、合図の雷光に小舟を東の砂浜へ寄せたのと、子供を抱えたギデオンが茂みから飛び出すのがほぼ同時。仮にも冒険者を務める身体能力、投げ出された子供は難なく受け止めるも、砂浜で繰り広げられた目の前の光景には「ギデオンさん!」と悲痛な声をあげて。今すぐ駆け寄って治療すれば"ギデオンは"助けられる──しかし、余所者に見られた時点で相手に自分達を逃がす気はないだろう。着岸してる今こそレイケルとビビの目はあっているが、離岸してしまえば広大な海で見えない小舟を見つけ出すのはほぼ不可能だ。ビビには……冒険者には、市民を守る誇りがある。幸い生贄になりかけた子供は魔法で眠らされているだけで、命に別状は無さそうだ。「私は贄となれば誰でも構わんのだぞ」と砂浜にビビ達を誘い込もうとするレイケルの言葉に一瞬、ギデオンに覚悟を決めた視線を向けてから、此度の諸悪の根源であるレイケルに向き治り「なんで私が仲間を見捨てないと思うの?貴方たちはクリスを見捨てたのに」と、蜃気楼魔法が強固になる沖合まで、苦手な防護魔法の術式を頭の中で組み立ながら、時間稼ぎで苦し紛れに今晩のもう1人の行方不明者の名を出して。そう、これだけ狼藉を繰り返していても、この事件においてトリアイナが疑われないのは、トリアイナからも少なからず行方不明者が出ているためだ。ならず者の寄せ集めと言えど、仲間まで差し出してよく疑心暗鬼で瓦解しないものだと関心さえ覚えたが、今晩も腕の中の子供以外にもう1人、ジェフリーの腹心クリスの行方不明報告が上がっている。市民からの疑いを逸らすためのデマかもしれないが、時間稼ぎになればなんでも良いと背中に汗を感じていると、ギデオンとレイケルの背後、茂みから脚を引きずったジェフリーが現れ「おい女!!どういうことだ!?クリスをどうしやがった!!」と怒鳴りながら此方に剣を向ける。その発言に此方がどういうことだ、とつるりとした眉間に皺を寄せた瞬間、背後で記者達の騒ぐ声が上がり、レイケルは冷酷そうな目を見開き、ジェフリーはバランスを崩して砂浜に倒れ伏した。その次の瞬間、足元がぐらりと大きく揺れたかと思えば、大きな波に煽られて小舟ごと勢いよく砂浜に乗り上げる。まるで、巨大な"なにか"に押された様な、と思わず振り返れば、そこには資料館で見た、かのガレオン船──エウボイア号がボロボロに破けた帆を、美しい月夜に揺らめかせていた。元は美しく輝いていた船首は折れて、赤黒い錆と黒い藻で覆われ、竜骨は水上からでも真っ二つに折れていることが分かる、真っ白だった帆は見るも無惨に汚れて裂け、船体はびっしりとフジツボで覆われて、中から禍々しく低い幾つもの声が重なり響いてくる。ほんの一瞬前までは姿形もなかった巨大ガレオン船の影に、ジェフリーはすっかり腰を抜かし、さしものレイケルもあっけに取られて硬直している。それを確認した瞬間、あれだけ恐れていた幽霊船を前にしても怯まずに脚が動いていた。月の光だけでもわかるほど広がった赤に抱きつく、または抱き上げるように手を伸ばせば、シルクタウンの時とは比べ物にならない程の白く温かな光が2人を包み込むだろう。 )
……っ!!ギデオンさん!!
( / 此方こそご理解とご配慮ありがとうございます。返信不要との事でしたが、非常に長文となってしまったことを謝罪させていただきたく、返信させていただきました。我ながら文章の圧におののいております……大変申し訳ございません。
3,4まで描写出来ればと申し上げましたが、ギデオン様のピンチという緊迫感溢れるシーンの勢いを是非活かしたく、捕まえるシーンを省略し一気に5まで進行させていただきましたが、返信し辛いなどございましたらご遠慮なく仰ってください……!
それではご指摘などございませんでしたら、今度こそ返信不要です。どうぞよろしくお願い致します。)
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