Petunia 〆

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匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
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  • No.637 by ギデオン・ノース  2023-10-27 15:57:12 


※ギルバートの帰国の経緯のみ、若干修正しております。



……どうも、先代。お久しぶりです──

(朝からたっぷりいちゃつきながら出勤したふたりを、唖然と立ち尽くさせたのは。──長らく行方の知れなかったヴィヴィアンの父、ギルバート・パチオその人だった。ギデオンが最後に見かけたのは20年近く前だというのに、どういうわけかその姿は、当時そのままの若々しさだ。無様に這いつくばるギルドの若造どもを、冷ややかに見くだす顔つきも、まるで現役時代からそのまま持ってきたかのようである。周囲はただ慄くばかりで、ギルバートの狼藉を誰も止められずにいるらしい。
とはいえ、ギデオンの立ち直りは比較的早かった。信じられないものを見る目を寄越してきたギルバートに対し、さっと社交用の、涼やかな仮面を取り繕って。いきなり、しかも全く予期せぬタイミングになったとはいえ、一応“相手方”の親に挨拶する機会となったわけだ、きちんとこなしておくべきだろう──と、しれっとした態度で告げる。しかしその片手ときたら、未だヴィヴィアンと繋いだまま。別段何もおかしなところはありませんよとばかりに、堂々と開き直っている始末だ。
──当然、ギルバートの逆鱗に触れぬわけがない。天文学的に膨大な魔力が、限界を超えて高まりに高まり、あわや大惨事か、というところで。奥の部屋からすっ飛んできた現ギルマスが、どうにか彼を宥めすかし、諫めてくれたからいいものの。こちらを激しく睨めつけたままの大魔法使いは、ならば今度は口先で、とばかりに、ギデオンに激しく息巻く。「失礼。“私”の記憶が正しければ、ギデオン、貴様はとうに四十も超えているのではなかったか?」「何故そのような老いぼれが。“私”の娘の手をとっている?」「この不埒者が。恥も常識も母親の胎に忘れてきたかね。ならば今すぐその手を離し、見習い時代からやり直すといい。“私”がじきじきに、骨の髄から叩き直してやる」「──ああ、だから! いいからさっさと、僕の娘から手を離せと言っているんだ!」
しかし当のギデオンはと言えば、ああ、懐かしいなあ、くらいの呑気な感慨に浸っていた。威嚇のためだろう“代理”時代の口調から、だんだんと素の口調になっていくのも、微笑ましさを感じさせる。他人が言うならば地雷だろう発言も、ギルバートだけは例外だ。何せかの20年前、ギデオンは彼の素の姿をばっちり目撃していた。幼い愛娘ヴィヴィアンを前に、だらしなく目尻を垂らし、目に入れても痛くないと言わんばかりにでれでれに可愛がっていた、愛情深いあの横顔。あれを見ていれば、こうして鋭く噛みつかれたところで、まあそうなるよなあ、くらいのものだ。まだうら若い二十代の娘が、四十の男と懇ろにしていると知れば、心配するのは親として当然。ギルバートのこの反応は、何ら間違ってはいない。
──だが、仮に。生きているか死んでいるかもまるで知らない人間なので、あり得ない話ではあるが。仮にギデオンの父親が、交際相手のヴィヴィアンをこのように貶しつけたら、ギデオンはきっと黙っちゃいない。それはヴィヴィアンも同じこと──つまり、たった今、目の前で。真横のギデオンも目を瞠るほどに、娘は父親を突き放したのだ。冷たく、刺々しく、普段の温厚さや人当たりの良さが、まるで全くの別人かのように。哀れギルバートは、強いショックと極度の疲労で気を失い。ギルマスが命じるまでもなく、慌てて周囲のベテランが介抱しに駆けつけた。その間もヴィヴィアンは、ギデオンの腕に取りついたまま、それを冷ややかに見くだすのみだ──奇しくも、最初に見たギルバートそっくりの顔つきである。己の愛しい恋人は、建国祭しかり、本気で怒ると非常に恐ろしくなることを、ギデオンは知っている。だがこの豹変は、あの時の比ではない……庇われたはずのギデオンが狼狽えるほどに苛烈だ。いったいこれはどういうわけか、とギデオンが目を瞬いていると。騒ぎを聞きつけたのだろう、医務室からようやくドクターが駆けつけた。彼はまず倒れているギルバートを見、次にギデオンとヴィヴィアンを見、両者を二度見三度見し。そうして、しわくちゃの手で頭を抱え、深々とため息をついて。「お前ら全員、なーにやっとるんだ……」と、まだ何も手をつけぬうちから、疲れ切った声を絞り出すのだった。)

(──それから小一時間後。カレトヴルッフのギルドロビーは平常運転を取り戻したが、ギデオンとヴィヴィアンはその中にいなかった。ギルバート・パチオの突然の帰還を受け、その応対を優先するよう命じられたのだ。ヴィヴィアンは嫌がったが、「必要な情報共有を済ませておかないと、あの男、ゴネますよ」とギルマスに言われれば、渋々といった様子で従うことにしたらしい。どうやら本当に、父親との関わりを最小限に済ませたいようである。ギデオンの見立てでは、何もさっきの一幕だけでこうはならない気がするのだが。パチオ父娘の間には、いったい何があったのだろうか。
とにかく、そういった事情によって。ギルドの応接室には今、重苦しい雰囲気が立ち込めていた。ギデオンとヴィヴィアンが並んで座る向かいの席には、相変わらずこちらを睨みつけてくるギルバートと、それを横から諫めに諫める現ギルマス。また倒れられてはかなわない、と後ろに控えるドクターに、記録係として呼び出され、白い目を向けてくるマリア。壁際にもたれているのは、ヨルゴスをはじめとした数人の戦士や魔法使い、いずれも手練れのベテランだ。全員がギルバートの知己であり、いざというときに彼を取り押さえる役目なのだが、あのにやけ面はどちらかというと、面白そうな状況を確かめに来た野次馬だろう。その他、ギルドの重鎮も複数名、周囲のソファーにずらりと腰掛け、威厳ある態度でじっと座している。これから重大な作戦会議でも始めるかのようだが、もちろんそういうわけではない。面子と空気が異常なだけだ。
さてまずは、ヴィヴィアンが危篤に至った経緯の説明、及び今の体調の共有がなされた。ギデオンと臨んだフェンリル狩りの最中に悪魔に襲われ、その身体を苗床にされた──と聞いて。真向いのギルバートは、早速頭に血をのぼらせ、素早く立ち上がったのだが。ヴィヴィアンが一言「パパ」と言えば、それだけでびくりと震え、またすごすごと着席したのだから、先ほどのやりとりが余程堪えたものらしい。──そうして、全身の魔力弁の破壊、という重傷を負った後、聖バジリオに3週間ほど入院したことを説明する。危篤だったのは最初の数日間のみで、その後はひたすら回復とリハビリに努め、その甲斐あって無事退院。キングストンに戻った後は、こちらのドクターがカルテを引き継ぎ、慎重に経過観察中。本格的なクエストには未だドクターストップがかかっているものの、訓練合宿に参加できる程度には回復したし、比較的に負担の少ない仕事にも、段階的に復帰している。後遺症も今のところ見当たらないので、予後は至って順調。遅くとも秋までには、医師として完治を言い渡せるだろう、という言葉が、ドクターより言い添えられた。要は、ヴィヴィアンの危篤の話は、今や解決済みなのである。
反対にギルマスが知りたがったのは、ギルバートの帰還の経緯だ。ギルバートはひとり娘ヴィヴィアンを溺愛している。それが何故、2ヵ月近くもかかってから帰ってくることになったのか。──次のギルバートの言葉は、一同を驚かせた。彼が手紙を受け取ったのは、なんとわずか1週間前のことだそうだ。ギルバートはトランフォードの魔導学院に雇われている教授だが、ここ数年前は、遥か北西にあるガリニア帝国の魔導学院にも誘致され、トランフォードの学院からそちらに出向する形をとっていた。ギルドもそれを知っていて、学院の私書箱宛に手紙を出したはずである。しかし当時のギルバートは、ガリニアの学院の命令で、遥か極北のルーンにまでフィールドワークに出掛けていた。数週間ほどすればまたガリニアに戻るはずが、現地の精霊に気に入られ、なかなか戻れなかったらしい(ヴィヴィアンの言った「あちこちにベタベタ痕つけて」とは、その精霊が施した“妖精のキスマーク”なるものだという。道理でギデオンには見えないわけだ)。そうこうするうちに、学院の雇っている犬橇隊が補給物資を届けに来たが、そのひとりがどういうわけか、こんなところに来るはずもない知人。義理堅い性格の彼が渡してきたのは、なんとカレトヴルッフからの手紙、しかも赤字で「緊急」と書かれた封筒に入ったものだ。本来ガリニアの学院は、これを大至急ギルバートに届けるべきであったのに、それを怠っていたらしい。それに気づいた知人が、どうにか手紙を持ち出して、ギルバートを必死に捕まえに来たのである。「学院の連中は、僕に研究を中止してほしくなかったんだ。自国の利益のためだけに、僕の娘の危機を知らせず、隠し通そうとしらを切っていた。許しがたいことだ」と、ギルバートは忌々し気に吐き捨てた。「馬鹿なことを。国際法に触れるのを恐れて、燃やす勇気もなかった癖に。見ろ、連中が長らくのらりくらりしたせいで、こんなに帰りが遅くなった。誰があそこに勤めるものか。僕は二度と戻る気はない」──。
口で言えば簡単だが、実際はそうもいかない。ギルバートは小国であれば国賓として迎えられるほどの、世界的な大魔法使いだ。心情は察して余りあるものの、向こうでの研究を投げ捨ててきたままとなると、最悪国際問題である。至急優先すべきは、まずギルバートの身辺整理だろうという話になった。とにかく、こっちの魔導学院に戻ってもらい、そこを介して正式に辞職する手続きが必要だ。しかしその前にと、ドクターが口を挟んだ。まずはしっかり休養しろ、下手すりゃお前さん死ぬぞ、と。大陸の最果て・ルーンから、遥か南のトランフォードまで、その距離は実に千里以上。それをたった1週間で戻ってくるというのは、到底人間のなせる業ではない。精霊の加護によって見た目が老いないというギルバートだが、その身体には相当無理が来ているはずだ。故にまずは、ギルドが宿を手配して、しばらくそこに滞在してもらう。そうして体調が戻り次第、そこから魔導学院に出向き、諸々必要な手続きを処理する──そういう話にまとまった。
それで終われば平和だが、そうはいかないからこの面子である。最後に再び、ギデオンとヴィヴィアンの関係について触れる段になったとき、周囲が固く見守る中、ギデオンは居住まいを正し、真剣な顔で切り出した。二ヶ月ほど前から、娘さんとお付き合いしております。彼女の予後を見守るために、今はサリーチェの家で同棲もしています、と。──そこからはもう、大変だった。再び怒髪天を突いたギルバートと、業を煮やしたヴィヴィアンの、火花を散らしての親子喧嘩だ。先ほどはヴィヴィアンの冷ややかさに怯みきっていたでいたギルバートも、可愛い娘が不埒な男と同棲までしていると聞けば、断固として譲らないことに決めたらしい。しかも彼は、ギデオンの若い頃を知っている。不特定多数の若い女と、散々遊んでいた時代──言い逃れようのない遊び人だった時代をだ。「ビビちゃんはこいつに弄ばれてるんだ!!」「ずっと傍にいなかったくせに、知ったような口きかないでよ!!」。結局最後には、ギルバートかヴィヴィアンのどちらかが部屋を飛び出してしまったことで、この会合は打ち切りとなった。いつもは決して動じないギルマスが、後ろのドクターと全く同じ様子で、頭を抱え込んでいる。無論、娘のいる重鎮たちが、当のギルバートより余程酷く胃を痛めて呻いていたのは、言うまでもない話だ。)

(──その日の夕方。例の会合の後、一旦自分の仕事に戻ったギデオンは、ギルドの医務室に足を運んでいた。ヴィヴィアンはこのところ、ドクターの手伝いという形でヒーラーの仕事に復帰し、調薬作業を任されている。何事もなければそこで作業しているはずで、しかしそろそろ引き上げ時だ。もう夕方の17時、シフトのひとつの区切りである。ギデオン自身も、本来ならもっと捌かねばならぬ筈の書類を、「俺らがやるから」と幹部たちに取り上げられ、部屋を追い出された後だった。仕事はいいから、それよりまずは、ビビちゃんの様子を見てやってくれ。あれは相当来てるだろ、おまえが話を聞いてやれよ──と。普段は散々、ようやく彼女と付き合い始めたギデオンのことをからかってくる連中だが、今日のところは純粋な気遣いらしい。ならば素直に甘えよう、ということで、退勤の誘いをかけに来たのである。医務室の扉をノックし、軽く声をかけてから、慣れた様子で中に入ると。ドクターに軽く頭を下げてから、「お疲れ」と、相手の方に向き直って。)

こっちの仕事が片付いたから、少し早いが迎えに来た。
まだ少しかかりそうなら、適当に暇をつぶすが……



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