匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(長く続く穏やかな微睡みに、ギデオンの頑なな檻がごく自然と緩んだ、そのとき。腕の中にいた温もりがびゃっと身を引いていく気配に、ようやくぴくりと目を覚まし、ぼんやりとそちらを見遣る。──目の前には、真っ赤な顔を埋めている、馴染みのうら若いヒーラー娘。そのすらりと長い脚を縮こめ、もうこれ以上は駄目ですと言わんばかりに、ギデオンの贈ったあの赤いマフラーでがっちりと防御を固めて。次いで向けられた涙目やら、全く痛くない反撃やら……酷く恥ずかしがりながらも、こちらへの甘さを決して捨てきれていない台詞やら。いじらしいにも程がある有り様に、まだ少し夢うつつの状態にあったギデオンの顔は、やがてふっと緩く笑み。)
……それなら、また近いうちに許してくれそうだな。
(なんて、これは流石に冗談だ──ほとんどは。身振り口振りでもそうちゃんと説明すると、暫く固まっていた体をほぐすべく身じろぎし、片膝を立てる形で、古井戸に背中を預けながらゆっくりと座り直す。まだ酩酊が残ったままだが、先ほどよりは多少の理性を取り戻したのか、もう相手を拘束する意図はないようだ。頭上の冷たく澄んだ星空を見上げ、白い息を幾らか吐いて。次に広場の方を見ようとすれば、季節に似合わず青々と茂った枝に、「?」とわかりやすく疑問符を(本当に何も覚えちゃいないらしい)。身体を傾け、隙間から奥を窺えば、どうやら村の広場の方も、お開きとなりつつある様子だ。焚火の始末をしたり、酔い潰れた冒険者や村人を介抱したりする光景が見え、その中であの酒の強い村長だけが、相変わらずヨルゴスと何やら盛り上がっていた。アイツ含め、うちの連中に関しては、昨夜泊まった村の公民館に放り込むことになるだろう。無論、そんな雑対応はあくまで男に限った話。パーティーの紅二点であるヴィヴィアンとアリアは、村人の家の一軒に泊まることになっている。そうか、それを想うと、そろそろ相手を帰してやらないとな……とまで考えて、ふと思い出し。正面の相手に向き直ると、マフラーに巻き込まれて撓んだ栗毛に手を伸ばし。何とはなしにひと房出して弄びながら、穏やかなまなざしを投げて。)
……そういや、今回のアリア。お前のサポートがあったにしろ、随分活躍してたみたいだな。俺も正直、あそこまで立派に動いてくれると思ってなかった。
上には改めて、評価を上方修正するように伝えるつもりだ……これからますますしごかれるだろうが、あいつならやっていけるだろう。
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