匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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──…………?
( ビビがテントから顔を出した途端、それまでガヤガヤと煩かった周囲が一気にしんと静まり返る。え、なに……? と怪訝に眉をひそめてぐるりと周りを見渡してみれば。あからさまに泳ぐ瞳を隠せない者、その一方で、だらし無く期待に緩む表情で固まる者、または何かがおかしくって堪らないといった様子で口元を押さえる者。反応様々に、皆一様に此方を見つめてくる奇妙な光景も、しかし、ビビにとっては見慣れたものだ。自身の容姿が彼等にとって好ましいもので、好ましい異性には見せたくない姿がある、という男の自尊心に触れない賢さは、幼少期のみぎりからとっくに身についている。何を話していたかは聞こえなかったものの、これまでの経験上、どうせ大した話はしていないのだ。文字通り蚊帳の外な状況に、はあ……と漏らしたため息は、次に発する声への前準備でしか無かったのだが、後ろめたいことのある連中にはどう映ったろうか。ピシリと硬化する大男達を再度見回し、再び口を開きかけたその時。背後からふわりと耳を塞がれ、「そういう話は場所を選んだ方が良いんじゃないか、レディの耳が腐ったらことだ」と、辛うじて聞こえる気障ったらしい台詞は、中で寝ていたはずのカーティスだ。一体何をしに出てきたのか、痛みに上がる呼吸と、熱を持った掌が痛々しくて。脚を引きずる相手をしっかりと支えてやれば──この居た堪れない空気も、ギデオンさんならピシッと纏めあげてくれるに違いない。そう誰がこの空気の元凶かも知らずに、真っ直ぐな瞳で大好きな相棒を見上げると、仕方の無い色男の汗を拭ってやってから、信頼に満ちた声をギデオンにかけ。 )
カーティス、無理したら駄目よ。
──ギデオンさん、私カーティスを寝かせてくるので、人選お願いしても良いですか?
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