匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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ん? ヨルゴスさんのこと?
( ──ねえ、ビビちゃんは怖くないの……? 優秀だが内気なヒーラーであるアリアが、そうおずおずとビビに尋ねてきたのは、初日の昼間。仲間との昼食を終えて、子供たちが大男に怯えると悪いから──と、孤児院も兼ねた教会への聞き込みに、ビビとアリアの2人だけが派遣された時の事だった。ビビも昔から子供から好かれることにおいては、そこそこ自信があったのだが、この後輩と比べて見ればどうだ。その生来の面倒見の良さから、常時複数人の子供たちに取り合われ、全身もみくちゃにされていた彼女は、此方のあっけらかんとした言い草にサッと顔色を変え焦り出す。「そ、そうじゃなくて……作戦の方っ……!」と珍しく声を張り上げる後輩をチラリと見やって、「私達は後衛も後衛だし、滅多に危険なことなんかないよ」というヴィヴィアンに、「自分のこと、じゃなくって……」と、此方が言うまでもなく自分の責任の重さをわかっているアリアだから、ついつい可愛くって意地悪もしてしまうのだ。そうして、表情を曇らせる後輩に──ごめんごめん、と嘆息をして。「怖がっても出来ることは変わらないからね」と、これは意地悪ではない本気の答えだったのだが、その不安そうな表情を見るに、どうやら肝心の後輩には刺さらなかったらしい。さてどうしたものか──ギデオンさんはこういう時どうするだろう、と無意識にその薄青い空を仰げば、丁度駆けつけてくれた神父に、一旦会話を中断せざるを得なかった。 )
──やっ、ちょっと、アンタたち……お仕事前なんだからそっちに体力取っときなって、ねっ、
( 彼らが現れた途端、ムッと湧き上がる独特の匂いに、タカタッ……タカタッ……とリズミカルに響く明らかに振り切れないとわかる逞しい健脚。へっへっへっへっ、と繰り返される生暖かい吐息だけならまだしも。何故かこの連中はビビを見つけた途端、一目散に此方へとかけてきて、その赤くて長い舌をべろべろとだらしなく指し向けてくるのだから、正直、ビビにとっては慣れた仕事よりも余程こちらの方が恐ろしい。とはいえ、これでも共に仕事を頑張ってくれる仲間達だ。個人的な苦手で彼らのやる気を削ぐことは避けたいし、テイマー曰く、向こうはビビのことを純粋に慕ってくれているらしい。いつか動物好きの同僚が──これが美しいんだ、と。──ビビにとっては信じ難いことに──もっさりと顔を押し付けて吸いこんでいた、ぬめぬめとした毛並みを光らせて、ビビの周囲をびょんこびょんこと飛び回る獣達に杖を抱きしめ、何とか宥めようと声をかけてみること暫く。完全に逆効果とばかりにテンションを上げ続け、前から後ろから、しゃがめ、撫でろ、舐めさせろとばかりに、ローブを引っ張ってくる連中をかき分け、此方へと向かってきてくれた相棒に、思わずうるっと涙腺が緩んだ。
そうして、元気なカヴァス犬から、サッとギデオンの陰へと飛び込めば。自ら盾にしておいて、その分厚い肩から顔を出し、ふしゃーっと威嚇する姿の迫力のないこと。当然、カヴァス犬の方も反省するどころか、遊んでもらえるものと勘違いして、元々高かったテンションを益々あげるばかり。ギデオンの影にいるビビを狙って、今にも飛びつかんとジリジリ距離を計っている光景は、傍から見れば微笑ましい限りだが、その広い背中をぎゅっと掴まれたギデオンには、その小さな震えが伝わっているだろうか。 )
はっ……はい、お陰様で、ひっ、コラ! アンタ達、ギデオンさんまで舐めるんじゃないの……!
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