匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
通報 |
っ……はい! ありがとうございます、お任せ下さい!
( ──ほらやっぱり! ギデオンさんは全部わかっていてああ言ったんだ。そう先程まで曇りきっていたヴィヴィアンの表情に、満面の笑みが広がる。アリア直属の先輩である自分はともかく、もし自分がギデオンの立場だったとして、一ヒーラーであるアリアの実力・性格そのどちらをも把握し配慮するなんてことが可能だろうか。恋愛感情を抜きにしても、こんなに尊敬する相手に、自分ならと見込まれて嬉しくないわけが無い。赤いマフラーの揺れる胸元を強く叩いて、白い吐息と共に誇らしげな顔を上げれば、目の前には明るい大通りが迫っていた。──そうなんですよ、すっっっごい美人なの。今度東広場前の劇場で役が貰えたらしくって、お休みだったらギデオンさんも見に行きませんか……等々と、振られた雑談に相槌を打ちながら、残り短い冬の家路を堪能すれば。秋の夕方にもそこで別れた門の前で、今度は素直に相手を解放したのは、まだ新しいかの聖夜の記憶が、ビビに余裕を齎してくれているからだろうか。その別れ際、するりとさりげなく大好きな温かい手に指を絡めて、明日の予定を確認すれば。──それじゃあ、おやすみなさい。そう上目遣いに揺れる瞳には、当たり前のようにギデオンだけが映っているのだった。 )
( そうして訪れた翌日早朝。ビビとギデオンを含む討伐班一行は、予定時刻にギルドを出立。このまま予定通り行けば、約一時間半程は馬車に揺られる予定である。
そんな大男犇めくお世辞にも居心地良いとはいえない荷台で、昨晩ギデオンから与えられた使命に燃え。相棒の言う通り、既に紙のような顔色をしているアリアの手を握ったビビと肩を触れ合わせているのは、左側にはその後輩アリアと──その反対側で長い足を組む美貌の魔剣士、カーティス・パーカー。アリアと同期でもあるこの青年は、年の程はビビの1つ上。共に遅れて冒険者を目指した者同士、この浅黒い肌に2つならんだ涙ボクロが色っぽい青年とは、何かと通じ合う機会が多く。シルクタウンでギデオンに惚れる前のビビと、噂になること複数回。しかし、実際はその治療費のために、冒険者を志すきっかけとなった、花も恥じらう可憐な病床の婚約者がいるという案外照れ屋でロマンチストな格好付け男と。その気軽な男に便乗してであれば、憧れのマドンナに声をかけられることに燥ぐ青年たち。──今日はアンタ眠そうじゃないのな、だとか。へえ、ビビさん朝苦手なんですか、僕水筒に珈琲持ってきてるので良かったら、だとか。未だ作戦共有の始まらぬ車内は、今日も今日とて賑やかな冒険者たちの声で溢れていて。 )
トピック検索 |