匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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……話が早くて助かる。
(未だ躊躇う様子のあったギデオンの表情は、ヴィヴィアンの聡明な瞳と頼もしい台詞を前に、あっさりと霧散した。“いざというときは素直に相棒を頼る”、以前はなかったその思考回路が、ようやく身についたものらしい。グランポートからおよそ半年、彼女が根気強く飼い慣らしてきた成果である──などとは、当の本人は知る由もないが。「俺が遠征で離れる間、悪いが家の様子を見てほしいんだ」と、単刀直入な一言から切り出したのは、ごく簡易な説明で。)
いつもなら大家の爺さんが面倒を見てくれるんだが、今は内臓を悪くして入院中でな。古い建物だから、冬の時期は妖精除けが必要で……1週間も留守にしていれば、奴らに棲みつかれる恐れがある。ついでに言えば、生ものを置いてきたままにしたから、そいつらも処分してくれるとありがたい。傷んでなけりゃ好きに持っていってくれ。
だから今日と、それからの二、三日に一遍ほど、簡単な換気とチェックを……要は、自然にしていれば勝手に残る人の魔素を、代わりに残していってほしい。
(──去年契約書に書いたのとは違う住所に移ってるが、方向はお前の下宿と同じだ。おそらく歩きで二十分くらいか。クエストで遅くなりそうな日は無理をしなくていい、あくまで余裕のある時に──と。告げながらさらさらと、受付にあるペンとメモ用紙を借りて書き出したのは、なるほどここからそう遠くない現住所。大通りを挟んで南側、ちらほらと畑や掘っ立て小屋も混じる、地価の安いエリアの一角だ。ペンのキャップをかちりと戻し、メモ用紙を相手の方に滑らせると、卓上に置いていた古い合金製の鍵、これも相手の手元へと。それから指を二本立てたのは、少額ではあるものの、手伝い分の給料としては充分だろう金額で。)
報酬はきちんと後払いする──こっちのけじめだ。低級クエスト相当分の現金か、それが受け取りにくければ、おまえがよく仕入れるポーションの基礎材料の現物辺りで。
何事もなければ一週間後には帰るから、鍵はその時手渡しでもよし、受付のマリアやエリザベスに預けておくも良し。……こんなところでどうだ?
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