匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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っ、……!?
(掌の内側を、甘く吸われるような感触。動揺に揺れるギデオンの瞳が、自然とヴィヴィアンの方を向く。しかしそこで目を伏せているのは、もはやいたいけな生娘を脱ぎ捨てた彼女だった。ほんの数日前、こちらのちょっとした素振りにも慄いていたくせに……ギデオンの魔力弁を拙くむしゃぶるその情態の、なんと淫りがましいこと。舞踏会の前、小屋での一夜、カレトヴルッフの医務室、聖バジリオの窓辺──今まで何度か、女らしい顔をした彼女を拝んできてはいるはずだが。ここまで芳醇な、魔性の色香を醸し出すヴィヴィアンなど、己は知らない……そう、ついに恋仲になった今。彼女の中の嫉妬の箍を無意識に外したことなど、朴念仁なギデオンは、まるで自覚してはいなかった。そんな戸惑ってばかりの顔が、ありありと隙だらけだったからだろう。柔くしなだれかかってきたヴィヴィアンに、やっぱり上手くできないから物足りないとでも言わんばかりに、いっそ厭らしいあどけなさで、甘ったるいキスを乞われれば。また無責任な煽り文句を──なんていつものお説教は、もはや脳裏によぎりもしない。──相手のお望み通り、いとも容易く、同じ深みへと心が堕ちて。)
……あの時は必死だったから。上手くできるかな……
(いつもの己らしくない、酷く砕けた、甘えたような口ぶりは。甘い快楽へ身を委ねゆく、無防備さの表れだろう。少しだけ顔を傾けて微笑みながら、大切な贈り物を脚衣の隠しにしまい込むと。下にやった手をそのまま、彼女の楚腰を這うように添え──あまつさえ、欲もあらわにさすりつつ。繋いだ左手の五指の先にも、脈打つように力を籠め、より掌同士を密着させては、己も吸い返そうとする。──けれども、互いの弁が壊れて孔が露出していたあの時とは、難易度が違うせいだろう。やはりギデオンも、上手く弁を合わせられずに、四苦八苦してしまう様子だ。目に見えぬ魔法器官のなかでも、魔力弁は魔髄とは違い、流動的な性質を持つ。特に訓練を積んでいるわけでもなければ、そもそも意識的に動かすことすら難しいはずのものだから、十数秒ほどはささやかに試行錯誤してうたけれども、結局は意識が散るのにもどかしくなり。上に下に組んでいた手を、もう一度熱く絡め直せば。甘えん坊な花唇に、たっぷりと応えを食ませて──結局ふたりして耽溺するのは、いつもそおりのそれだった。
故に、それは偶然だったのだ。青い月明かりの下、それでも宵闇の暗がりに囲まれているせいだろう、船が僅かに進行ミスを犯したらしい。がくん、と軽い揺れが起き、後ろによろめきかけたヴィヴィアンの身体を、唇を押し当てたまま力強く支えようとした……その時。もののはずみでぴったりと重なった魔力弁、そこから己の魔力がどろりと流れ込む感触。反対に、ヴィヴィアンの魔力もまた、こちらにとろりと溶け入ってきて。その既知のようでいて、ほとんど別物と言ってもいい、鮮烈な感覚に。一瞬「!?」と体を固め、糸を引きながら唇を離すと、蕩けていた顔を呆然と見合わせる。──今のは、一体。)
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