匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(ヴィヴィアンとエリザベスを包み隠すかのような、縦にも横にも広い大波。それはすぐにも、真っ白な飛沫を立てて打ち砕けはしたのだが。高く低く荒れたままの海面により、はぐれてしまったふたりの姿は、依然としてこちらには見えず、救助に向かう男たちの胸を焦燥感でひりひりと焦がす。故に、必死の思いでようやく彼女らのそばに泳ぎ着いたとき、すぐには気づかなかったのだ。)
ヴィヴィアン、無事か!
(開口一番に相手の無事を訊ねれば、一旦周囲を振り返り、こちらに脅威が差し迫っていないかの確認を。──周辺の海上をご機嫌で走り回るのは、やはり例の海洋魔獣、エッヘ・ウーシュカの亜種らしい。トリアイナの言うとおり、人間にちょっかいを出すきらいはあるが、怪我を負わせるほどの害を与えてやろうという悪意までもはないようだ。そうはいっても気は抜けないので、まったく傍迷惑なやつだと、忌々し気に睨みつつ。ひとまず安堵の息を吐きながら振り返り、「とにかく浜に……」戻ろう、と言いかけた、そのときだ。)
…………!?
────わ、るい、っ……
(ただでさえ面積の少なかったそれを、邪悪にも剥ぎ取られた今。目の前の恋人の、縛めから解き放たれた肉感たっぷりの乳色の果実は、あまりに見事に美しい円形を描きながら、青海原にぷかぷかと、蠱惑的に浮かび揺れていた。動物的な反射として自然にそれを見つめてしまったギデオンは、次の瞬間わかりやすいほどぎこちなく動揺し。ばっと口元に手をやりながら、思い切り顔を逸らして。──いや、まさか、違う、大丈夫だ、己は何も見ていない。波が乱れているせいで一瞬淡い飾りまで見てしまっただとか、寧ろ見え隠れするチラリズムめいた様子のせいで余計に煽情的に感じただとか、散々紳士を装ってきた分、あまりに鮮烈に映ったそれを本能的に目に焼き付けてしまっただとか、まさかそんな、神に誓って。……だがしかし、かつて散々女を喰い飽きてきたはずのギデオンの横顔には。エメラルドグリーンの海に映え映えするほど、いつもの涼やかな表情には不似合いな紅が差していて。)
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