Petunia 〆

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匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
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  • No.558 by ギデオン・ノース  2023-09-03 16:38:36 




──……、約束するとも。

(しっとりと希う声も、贈った簪をうっとりと気に入った様子も、それをすぐさま身につけてくれたことも。そのすべてが、文脈は曖昧なままでも、ギデオンの胸の内を深く深く満たしてくれるものだから。つくづくヴィヴィアンには、何を講じても敵わぬらしい、そう小さく笑おうとしたのだが。実際に返した声音は──真剣な面持ちをした男の、低く掠れたそれとなり。
いつもより大人びた髪形の恋人を熱っぽく見つめ、その前髪を優しく掻き分けてやったが最後。不意に細腕を抱き寄せたかと思うと、店々の隙間の路地裏へ、流れるように連れ込んでしまう。人通りのあるのどかな往来から、ほんの少し横に入っただけのその暗がりは、人目を忍ぶには充分だろう。よって、せっかくのシニョンを崩さぬよう、己の大きな両掌を、彼女の背と柳腰に力強く回しながら。胸の内の熱を伝えるように、普段よりもことさら深く激しく、互いの唇をたっぷりと、夢中で溶け合わせるのだった。)

(──さて、そうやってなんだかんだがっつりといちゃついていれば、あれほど見込んでいたデートの時間は、矢のように過ぎていくものだ。ようやく我に返り、「そろそろ歩き出さないと」と笑い合えば、また仲良く手を繋ぎ、懐かしの商店街をのんびり見て回ることにした。去年は結局、事件後の処理への協力で忙殺され、観光を楽しむ暇などろくにないままグランポートを発っている。故に、何の懸念も責任もなく、元気な体でぶらぶらするだけのことが、もう晴れやかに楽しくて。
釣り道具屋を通り過ぎれば、今まで釣りを楽しんだことはあるかどうかを話し合い。磯料理屋の看板の前でいちいちギデオンが立ち止まり、メニューに真剣に目を通せば、ヴィヴィアンがそれはそれは愉快そうに、ころころと笑い声をあげる。やがて老舗の酒店に辿り着けば、「キングストンに帰ったらどれで晩酌しようか」なんて話しながら、鮭とばやレモラのからすみ、蓑亀の肝の天日干しを買い込んで。「日に干した聖獣の肝は、体にとっても良いんですよ」──ヒーラーらしいコメントをくれたヴィヴィアンが、次の瞬間、魔法薬の材料を並べた店にぱあっと目を輝かせるものだから、くっくっと笑いつつ、お次はその店に立ち寄ろうか。オウムガイの粉末、ユウレイクラゲの毒液、メガロドンに茂った海藻を煮出して作った汁のボトル、数千年以上前の貝や骨が埋まっている海琥珀……どれもこれも素晴らしい品揃えだが、珍しい素材であればあるほど、当然値段は高くなる。財布を握ってうんうん唸るヴィヴィアンに、「この予算の中で好きなものを買うといい」と、敢えて金額を設定することで、逆に遠慮なく買い物ができる取り計らってみれば。彼女は最初こそ、「この簪までいただいてるのに!」と頑なに固辞していたものの。「良い素材が揃えば、俺のために作る魔法薬もそれだけ良いものになるんだろう?」と、ギデオンが甘えてみせれば。もの言いたげなジト目を寄越しつつ、結局そのアイデアには抗えないといった様子で、最後には嬉しそうに籠の中身を厳選していた。

そうして土産袋を手に提げ、海岸沿いのなだらかな帰路を、夕陽を眺めつつのんびり帰って。コテージについてすぐ、もう一度だけキスを惜しむと、「また明日」と別れを告げる。
──その後、ヴィヴィアンのほうはどうだったかわからないが。男部屋に帰還したギデオンのほうはといえば、ジャスパーから開口一番、「訓練合宿中に女連れで一日中ほっつき歩くたぁ、随分良いご身分だなあ??」と嫌味をかまされる羽目になり。……どうやら、本格的な救助訓練をしたり、借り物の船を動かしたりする日だったというのに、例のろくでなしコンビ(言うまでもなくマルセルとフェルディナンドだ)が、また随分やらかしたらしい。席を外してて悪かった、と土産……もとい賄賂の地ビールの瓶を投げ渡せば。「おまえのそういうところがムカつくんだよ!」と唾を飛ばして怒鳴りつつ、ちゃっかり氷結魔法で冷やしてごくごく飲み干すのだから、扱いやすくて助かる男である。そこにデレクやらレオンツィオやらもやってきて、あれやこれやと言い合っているうちに、いつの間にか音もなく現れて全員をビビらせたのは、無論我らがギルマスだ。
「……ノース。今日大目に見た理由は、賢い貴方ならわかっていますね?」。その有無を言わさぬ問いかけに、降参したように無言で頷く。春に遭った例の事件で、ヴィヴィアンが生死の淵をさ迷ってから約2ヵ月。彼女の予後が定かではないからと、未消化の有休を追加で詰め込んだり、自宅でできる書類仕事を優先的に回して貰ったりと、既に随分融通を利かせてくれていた。今回はその最後の羽休みで……この合宿が明けてしまえば、またしばらくの間、この御仁の意のままに動くことになるのだろう。つくづく感謝している上、この先のキャリアの希望も──ヴィヴィアンにはまだ話していないあの件だ──聞いてもらっているだけに、圧を拒めるはずもなく。「……土産です、」と、ジャスパーに渡したそれより随分高級な酒の瓶を、恭しく差し出すことにして。

そうしてまた、ベテラン戦士としての顔で仲間たちの元に戻り。夕食の段取りや明日以降の連絡事項を請け負った後、湯浴みを終えた後ですら、諸々の会議で忙しかったものだから。──弟分の青年、若い弓使いのアランが、連れもなくたったひとり。夜のプライベートビーチではなく、鬱蒼と茂る真っ黒な木立の方へ向かっていることに、ギデオンはついぞ気づかなかった。否、一度だけ、窓の向こうにその影を見かけはしたのだが、その時は何とも思わず見過ごしていた。
思えば、レイケルが着々と根を張っていたこのグランポートにて、かの国の息のかかった者が暗躍しない筈がない。だというのに、その時のギデオンも、ジャスパーも、ギルマスですら。身内の動きを怪しんで疑う者など、この場には誰ひとりとて存在せず。よって、大人しいそばかすの青年の姿は、誰にも見咎められることなく、一晩のあいだ闇の中へと消えていた。それが大きな過ちだったと知るのは……もう少し、後の話だ。)



(さて、翌日。今日は訓練最終日、そして最後の自由時間の日でもある。朝早くから海に入って救助訓練の仕上げを済ませた面々は、昼食がてらグランポートの商店街に出掛け、土産の買い込みや夕食の材料の買い出しを楽しんだ(今夜の晩餐は、ビーチでのバーベキューの予定だ)。ギデオンもヴィヴィアンも、ここの通りは昨夕のうちにふたりで楽しんでいたものだから、仲間のための案内や荷物番、といったサポート役を率先してこなし。そうしてほくほくで帰ってきた面々は、コテージで一休みした後、再び初日の水着に着替え、エメラルドグリーンの海へ大はしゃぎで繰り出した。

が、それは一部の例外を除いての話。珍しくにっこりと笑ったギルマスが、不意に何名かの名を挙げて。何かと思えば、訓練の補修を受けろと無情にも言い渡したのだ。
「おまえたち、今朝のあれを仕上げなどとは言わせません。仲間や友だちと一緒に買い物を楽しんだでしょう? 飴を先にやったのですから、もう一度だけ励みなさい。大丈夫、真剣に取り組んで合格点を取れば、皆のところへ戻る許可をすぐにでも出しますよ」──と。
訓練追加を命じられたのは、例のろくでなし組と、どうしても運動が不得意な事務方数名。また例外的な参加者として、ヴィヴィアンも「できれば流れを掴む程度に」と、参加を促されたらしい。彼女の場合は出来不出来ではなく、そもそも昨日丸一日訓練を休んでいて何も知りようがないのが理由である。……つまるところ、腐っても冒険者なはずのろくでなし組は、不得手だろうと多少は仕方ない一般人、もしくは訓練未受講の後輩と並べられてしまうほど、なんにも身につけちゃいなかったわけだ。
最初こそ魂が抜けたようにがっくり来ていたマルセルとフェルディナンドだが、ヴィヴィアンやエリザベスも同じ補修を受けるとなれば、その蘇りの鮮やかなこと。「ビビちゃん、俺が手取り足取り腰取り教えてやるよ」と無駄に色気たっぷりに抜かしたフェルディナンドは、直後に青い空から訳もなく雷が落ちて、無様に撃沈していたし。やけに凛々しい顔で天を突かんばかりに挙手したマルセルが、「俺! 人工呼吸下手だったんで! 一生懸命補修します!」と高らかに主張した後、「あっでも、昨日の人形はぁ、消防局に返しちゃったしぃ……」とエリザベスをチラチラ見始めるや否や。どこからともなく颯爽と現れたバルガスが、「良かったら俺が付き合いますよ」と、白い歯を見せて笑えば。マルセルはその笑顔を引き攣らせ、「いやっ、い、いいわ……」と、すごすご手を下ろしてしまった。後輩がせっかく申し出てくれたのに何が不満なのだろう、まったく不遜なことである。

そうして、指導側も含め十人程度。岩礁のそばにある穏やかなエリアで、溺れたふりをしたマルセルをフェルディナンドが救助するという、当人ら含め誰もが砂狐顔になる訓練中に──事件は起こった。不意にざざざざ、と不審な音がしたかと思えば。参加者たちの浮いている海面一帯が、突然どっぷんどっぷんと激しく踊りはじめたのだ。
「おわあ!?」「なんだなんだ!?」とあちこちから上がる悲鳴、岩礁から指導の声を飛ばしていたギデオンとジャスパーも思わず同時に立ち上がる。真っ先に飛び込んでいたバルガスは、幼馴染を助けようと力強く泳ぎ出すものの、波の力が強すぎてそちらに近づくこともできない。そうこうするうちに、補修組は皆海上でばらばらになり──ヴィヴィアンとエリザベスに至っては、随分沖まで流されてしまったようだ。「無理に泳ぐな、今助けに行く!」とヴィヴィアンに叫んでから、ギデオンもまた海に飛び込み、荒波を掻き分けてそちらに必死に向かおうとする。だが、他の面々を助けに行ったジャスパー含め、もう少しだけ岩の上から辺りを注意していれば、きっと見落とさなかっただろう。──ヴィヴィアンとエリザベスが流されてしまった方へ、不気味な黒い影が海中を突き進んでいることに。)



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