匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(躊躇いがちかつ遠回しなおねだりに、思いがけず深い安心感が沸き起こる。ヴィヴィアンはまだ、こちらの全てが恐ろしくなってしまったわけではないのだ──きっとまた、親しく打ち解けあう関係に充分戻れる。とはいえ、返事をする前に、今にも泣きだしそうな相手が必死に呼吸を整えるのを、ゆっくり待つことにして。相手の方を向きながら、弱々しく震える背中を優しく擦ることしばし。途切れ途切れに打ち明けられる心情を最後までしっかり聞き届ければ、まずはその頭を、よしよしと撫でてやり。)
……怖い思いを、ひとつどころじゃなく、たくさん抱え込んでたわけだな。言葉にするのは難しいだろうに、よく俺に話してくれた。
ちゃんと確かめ合おう……おいで。
(そう柔らかな声をかけながら、樽の上で深く座り直し、その両腕を緩く広げて、相手を迎え入れる姿勢を。おずおずとか、飛び込むようにか──いずれにせよ、相手が懐に潜り込んでくれば、嬉しそうに喉を鳴らして、ごく優しく抱きしめるだろう。そうして、小雨と波打ち際の優しい水音に包まれる中。相手の側頭部を己の胸板にもたれさせ、こちらの深い呼吸とゆっくりした鼓動を、ヴィヴィアンにも分け与えながら。絹糸のように柔らかな髪を、ゆっくりと撫で下ろし続けて。)
俺がおまえに欲深くなるのは、自然なことだとは思ってる。だけど、昔怖い思いをしたおまえが、同じ“男”である俺にも怖さを感じてしまうのだって、当たり前のことだろうよ。
だから、気にしなくていい……焦らなくていい。いつか怖くなくなるなら、そのときまでゆっくり待つし。そういう日が来なくても、おまえとこうしていられるのだって、俺は充分幸せなんだ。
それなのに、見捨てるなんて馬鹿な真似をするはずがないだろう? ありもしないことは、怖がる必要なんてない。
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