匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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…………、
( ぬるく湿った潮風に、しゃぼんのような林檎のような、無垢で清潔な香りの巻き毛が揺れる。此方の血迷った質問に、ギデオンがあまりにあっさり頷くものだから、思わず脱力して優しいエスコートに引かれるがまま、斜めった大樽に腰を掛けると──こうして大好きな手を握り、ただ温かいだけの優しさに浸っていられたらどれだけ幸せだろうと、ぽやりと目を細めて現実逃避に耽っていた時だった。確かにそう思っていたのは事実だが、本人には言ってなかったはずなのに。ギデオンの口から漏れれ聞き捨てならない言葉に、思わず身体を乗り出して、 )
ギデオンさんは怖くなんか……ッ!
…………。ごめんなさい、ギデオンさんだから、怖いわけじゃないんです……
( ──優しいギデオンを傷つけるような態度をとってしまった。その事がとても辛くて、勢いのままに反応をとってみたものの、それが嘘だということは誰より自分がよく知っていて。硬い太ももに着いた手をそっと離し、暗い顔で項垂れる。──これまでビビを傷つけたのも、裏切ったのも決してギデオンではないのに、大好きなこの人を信じたい気持ちはあるのに、これまでの経験がそれを許さない。そんな己の事情でギデオンに迷惑をかけたくない、見捨てられたくない。たったそれだけの事を伝えるのがこんなにも怖くて、優しいアイスブルーを見上げると「ハグ……は。ハグも、不純ですか……?」と、何よりビビに勇気を与えてくれる触れ合いをおずおずと強請って。何度か深呼吸をしてから、震える声を振り絞る。途切れ途切れの本音は醜くて、時々甘えたような水音が鼻にかかるのが酷くて聞くに絶えない。自分でも支離滅裂な本音を吐露しきれば、我ながらどうしようもなく稚拙で、相手に相応しくない弱音に心がしずんでいくようで。 )
……昔。その時の彼氏に、無理矢理……その、されそう、に、なったことがあって……
ギデオンさんはそうじゃないって、有り得ないって思っても駄目、なんです。
……本当はちゃんと応えたい、んです。でもきっと、いっぱいご迷惑おかけしちゃう。ギデオンさんが今までしてきた人達に敵わない……って、見捨てられたらって、それが、怖くて……
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