匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(ぐりぐりと潜り込んできた栗色の頭に、一瞬動きを止めて驚いた様子を見せつつも。これでよし、と言わんばかりのご満悦な様子や、甘えん坊を全開にした堂々たるおねだりが、なんだか無性に可笑しくて。「負けたよ」と仕方なさそうに喉を震わせ、背後の単子葉植物の根元に心地よく背をもたれると、大きな雛鳥の口に氷菓を運んでやることにする。しゃくしゃくしゃく──腕の中から、嬉しそうに氷を噛み砕く音。それがじかに伝わってくるだけでこんなにも満たされるのだから、つくづく不思議なものだ。2度、3度と夏氷を食べさせ、同じ匙でごく自然に自分の分も堪能しながら、遥か視線の先、黒々とした水平線に沈みつつある真っ赤な夕日を、心地よい思いで眺め。ふと、己に擦りつきながら眠たげに見上げてきた瞳を見つめ返せば。穏やかな笑みを返しながら、その形の良い頭を宥めるように撫でてやり。)
いい、と言ってやりたいところだがな。プライベートじゃなくて、ギルドでの旅行だから……“不純異性交遊”は禁止だ。
それに実のところ、今日はこの後、明日からのカリキュラムを組みなおす会議が入りそうでな。どの道、探検もデートも、明日以降にさせてくれると助かる。
(──歳の差のある交際関係の、世知辛いところである。不純異性交友が禁止と言ったって、熾烈な抽選を勝ち抜いたカップルや、そうでなくともこの特別なシチュエーションを出会いの場に……と目論む輩は、こっそり隠れて盛り上がるに決まっている。しかしそれはあくまでも、若気の至りが許される世代の話。ヴィヴィアンはそちら側であれど、生憎ギデオンはそうではない。立場や責任を放り出して恋人にかまければ、下の世代に示しがつかないし、責任者仲間にも申し訳がないのだ、と。相変わらず生真面目で理性的な一線を引きつつも──どこかでデートはするつもりだ、とさりげなく明かしたのは、甘えたい気分の相手に、甘い飴をやりたいからで。少し解け始めた氷菓を掻き集めてまた頬張り、甘味に目を細めながら、相手にももうひと口運び。)
だから、今日甘えるなら今のうちだ。夕餉の場所に引き上げるまで、まだ少し時間がある。
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