匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( 海で溺れかけた友人を、暖かなタオルで優しく包み込む。狩りをせずとも生きていけるようになったこの現代で、何故運動神経の悪さは未だ嘲笑の対象足り得るのか。人前で運痴を晒す痛みを知っているリズはこの時、どうやってビビを慰めようか、結構真剣に考えていたのだが。真っ赤な顔をして項垂れていた友人は、ゆっくりと顔を上げたかと思うと第一声、「~~~ッ、ギデオンさん超カッコよかったぁ……やっぱり好き……」と。……まあ全くもって心配のし甲斐がないことである。
そうして訪れた、待ちに待った自由時間。いつもより冷たい目をしたエリザベスを宥め透かし、アリアも誘って再度波打ち際に繰り出した乙女3人の──……その遥か後方。穏やかな笑顔で腕組みをしたバルガスが、10m程の間隔を守って、ずっと着いて来るのは気のせいだろうか。最初はまったり綺麗な貝殻を集めたり、仲間の潮干狩りを冷やかしたりと、穏やかに砂浜を楽しんでいたものの。これだけ美しい海を目の前にして、最初は冷たい水で足を洗う程度だったのが、次第にお互い水を掛け合っては逃げ惑い、結局本格的な水遊びとなってしまう。終始後方で腕を組んでいたバルガスは、きゃっきゃと上がる楽しげな声に、フラフラと誘われてきた青年達を追い払いはするものの、とうとう最後までこちらに声をかけて来ることはなく、真夏の太陽はあっという間に、西の空へと傾いていくのだった。 )
……ギデオンさん!
( まず最初に体力の限界が訪れたのはエリザベスだった。撥条が切れたかのように動かなくなった彼女を、すかさずバルガスが回収に来て。それからアリアも、彼女の同期との約束があるとかで、すっかりひとりぽっち、一気に手持ち無沙汰になってしまい。赤紫に染まる水平線をぼんやりと眺めていたその時。背後からかけられた声に振り返れば、ちゃっかり美味しそうな物を手にしているギデオンに小さく吹き出して。遊び相手が居なくなってしまった寂しさと、訓練の疲れからだろうか。大好きな恋人の姿に安心すると共に、どうにも甘えたい気分になってしまう。そこへ相手の口から、ずっと一日楽しみにしていた予定の延期を提案されれば、どうにも我慢ならなくなってしまって。隣に座ろうとしたギデオンの腕の間に、少し強引にでも納まると、「あーん、」と相手手ずからの給餌を強請ってみせる。──……シャクシャクと甘い氷を噛み締めながら、ギデオンの肩に頭を預け、前方に腕を伸ばしてぐっと伸びを。そうしてたっぷり相手に甘え倒してからやっと、己の体力の限界に素直に頷きつつも、温かな肩、もしくは腕にぐりぐりと頭を押し付ければ。明らかに眠そうな表情でしっとりと低い掠れ声を漏らして、肩越しにその青い瞳を覗き込み。 )
……んー、うん、そうする、
でも、ギデオンさんとは一緒にいたい……いいでしょ?
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