匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( 今回水難救助訓練に参加した若手達の中で、元々泳ぐことができたのは、優等生バルガスに、漁師町出身のビビの同期が2人のみ。それでも、腐っても冒険者であるビビ達は、少し正しいフォームを教われば、なんとか泳ぎ始められたのだが──大変だったのは、リズを筆頭とした少数の事務員達だ。足がつかない高さになった途端、笑顔で沈んでいく備品担当に、波に流されて砂浜を転がる経理受付──極めつけに、休憩から戻ってきたエリザベスが、皆が固まって練習している辺りより、ずっと砂浜側で足を縺れさせたかと思うと。見事に顔から着水し、そのまま自分の腰より低い水位で溺れ出したのを目撃したバルガスの表情といったら。その長身で虚無顔の彼女を釣り上げて、「ごめん、もうリズちゃんは泳げなくてもいいと思う」と、項垂れた人気者の目は、今まで見たことない程虚ろだったという。
それでも、ギデオンやジャスパーら、用意周到なベテラン勢の手厚いサポートの甲斐あって。とうとう最後の一人が浮いた時の事務方の歓喜たるや。疲れきって力む力も無くなったらしい看板娘が、ゆっくりと波に揺られたのは、訓練終了時間間際、苦節4時間目のことだった。突如わっと上がった歓声に周囲を見渡したビビの顔が、親友の勇姿(?)の奥に、此方へと向かってくるギデオンを見つけた途端、あまりにも分かりやすくぱあぁっと輝く。ビビ本人はぐんぐんと進んでいるつもりで、相棒と離れていた距離の4分の1程度の距離で落ち合うと。もう心の底から楽しくって仕方がないという興奮を隠す様すらなく、水飛沫よりキラキラと輝く笑顔をギデオンに向け。その指示に必死に砂浜側へと水を蹴りながら、はふはふと顔を真っ赤にしながら言い募って。 )
──ギデオンさん、ギデオンさん! あ、お疲れ様です!
あの……あのねっ、あっちの岩場の方に、すっごく綺麗な洞穴があるって、デレクさんが言ってたんです!
後で一緒に見に行きましょ、ね、青く光ってるんですって……っ!
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