匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( まだ好きって言われてないからキス出来ない──なんて、流石に子供が過ぎただろうか。目の前で可笑しそうに破顔したギデオンにほっと胸を撫で下ろすと、額を寄せる温かな仕草が純粋に嬉しくて、えへへ、と子供のような声が漏れる。今更ギデオンが如何にビビを大切にしてくれているかなんて、よくよく分かっている。それでも、その想いを形ある言葉として受け取れたなら。私も大好きだと返して、先程の続きを強請ろうと、その顔に強かな笑みを湛えていたと云うのに、 )
…………、
( ──大好きな声が名前を呼んだ。その甘さに息を飲む暇すら与えられずに、さらりと与えられたその三音を耳にした途端。今まで聞いたこともないくらい大きな音でドッと心臓が高鳴って、呼吸の仕方さえ忘れてしまう程の衝撃だった。そのうち繰り返されたより糖度の高いそれに、はふはふと浅い呼吸を繰り返して、チカチカと輝く視界が眩しくて。口角がじわじわと上がるのは耐えられないのに、ずっと欲しかった言葉に視界は歪む。そうして、とうとう与えられた熱烈な愛の囁きが、自分が仕込んだものとも知らずに──大輪の笑みを浮かべると、大粒の雫が目の縁を乗り越える感触がした。 )
はいっ……!
ずっと……ずっと、いっしょに居ます……!
( ああ私、今絶対変な顔してる。これ以上なく幸福に満ち溢れた笑顔を浮かべているのに、次々と溢れ出す涙が真っ赤な頬をぐちゃぐちゃに濡らして止まらない。喉が詰まって伝えられない想いの代わりに、回した腕にこれでもかと力を込めるも。折角ギデオンから合わせてくれた視線を逸らしたくなくて、無理に首を曲げるものだから、自分が今どんな体制になっているかもよく分からない。ギデオンに似合う大人で素敵な女性には程遠い──それでも、相手が自分を選んでくれたことが心底嬉しくて。いつの間にか、病み上がりの体を全部相棒に預けて、掠れ声で「私も好き」「大好き」「愛してます」と繰り返しながら、触れている額や肩をぐりぐりと擦り寄せれば、視界にたったそれだけうつった深い蒼に、今度こそその瞼をそっと伏せるのだった。 )
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