匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(きっぱり告げられた答えに頷き、上着を掴んで立ち上がりながら薄い袖を通す。バディを組んでの初めての仕事だったシルクタウンの事件では、相手のヒーラーとしての能力や、最適な作戦を導き出す思考力と行動力、何より一般人を必ず守らんというプロ意識の高さを垣間見た。そしてここ数日の資料精読や地道な聞き込み作業でも、天性の気づきの良さを何度か発揮するのを見ている。このため、相手のそういった判断には信頼を置くようになっていて。物わかりの良い店主の許可のもと、資料を残した部屋にきっちり魔法封印を施し終えれば、裏口から宿の外へ。空は快晴、太陽は天頂に届く手前といったところで、これから暑さが増す頃合いだろう。この港町特有の砂利道を歩きながら、表向きはあくまでもちょっとした観光。大通りの隣、海辺に続く商店街を資料館の方へ抜けながら、甍を連ねる店々の装いを相手とそれとなく眺めていく。海産物をふんだんに使った磯料理屋、釣り道具屋、水着屋、流木や海の生き物の骨を使った民芸品店、珊瑚や真珠のアクセサリーショップ。ほとんどの店の軒先には、潮風を受けてカラカラと回る魚の意匠の骨飾りが吊るされている。ふと目をやった先には老舗の酒店があり、店頭の樽の上には貝ひもや、『人魚の鱗』と題された鮭とば、レモラのからすみ、蓑亀の肝の天日干しが。いずれも酒飲みにはたまらない肴である、珍しく物欲しそうな声音でぼんやりと呟いて。)
美味そうだな……この件が落ち着いたら、つまみでも買い込みたいもんだ。
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