Petunia 〆

Petunia 〆

匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
通報


募集板でお声がけくださった方をお待ちしております。



コメントを投稿する

  • No.507 by ギデオン・ノース  2023-07-23 16:25:59 




(安堵の笑顔を綻ばせてからすやりと寝入った相棒に、ギデオンもふっと小さく笑みを零し。「おやすみ」と囁きながら、そっと額にキスを落とす。少しでも休まるように、回復するように……そんな祈りを抱いて自然にとった仕草だったが。もしかすればそれは、他でもない相手から移されたのかもしれなかった。

──さて、それから三、四日の後。魔力の自己生産量ではヴィヴィアンに大きく劣るものの、彼女ほど深刻な損傷にさらされていなかったギデオンは、彼女より先に無事退院し、今回の事件の処理に奔走することになった。この1週間ほども行っていたカレトヴルッフへの再三の報告に、祓魔師協会との面会、例の森での事後検証、掻き上げなければならない書類エトセトラエトセトラ。本来なら祓魔師たちに祓われるはずのアーロンが、この時まで拘束されていたのは、その過程で厳重な確認を行うためだ。ギデオンとヴィヴィアンにどこまでの被害があったか、そもそも何故襲われたのか。主犯たるヘレナが、再び今回のような事件を引き起こす恐れはないか。
昔可愛がっていた後輩が、夢魔を誑かした代償として、悪魔に成り果てていたと知り……ドニーは酷く複雑な顔をしていた。アーロンは元人間ということもあり、全面的に協力してくれるが、それでも祓魔師である彼は、やがてアーロンを処刑せねばならない。
──ギデオンとヴィヴィアンを脅かした悪魔ヘレナの、復活の可能性について。キングストンにある祓魔師協会の聖堂にて、魔法の鎖に巻かれても尚けろりとしているアーロン曰く。少なくとも、今すぐということは絶対にないらしい。ヴィヴィアンの聖の魔素に消し飛ばされたヘレナは、それでも魂の大部分が地獄に引き戻されただけで、力を取り戻せば復活し得るが。聖なる力に灼かれた傷を回復するのには、やはり長い時間を要するそうだ。だが、ひとたび地上に戻れるようになったなら──この触媒を座標にするだろう、とアーロンは“それ”を皆に見せた。ヘレナがアーロンに突き刺して遺した、五つの黒い、禍々しい爪だ。
この爪は不気味なことに、焼いても潰しても、埋めても砕いても、またいつのまにかひとりでに、無事な状態で復元される性質を持っていた。プロの祓魔師たちがよってたかって聖魔法をぶち込んでも蘇ってしまうのだから、間違いなく特級呪物だろう。いっそ本部の地下聖堂で厳重に封印すればいい、という意見に、しかしアーロンはかぶりを振った。あの女の執着はそう簡単に制御できない。ならば目には目を、歯には歯を。悪魔の自分に託して貰えれば、人間ではたどり着けない魔境にでも赴いて、こいつを完全消滅させる方法をきっと探しだしてみせるよ……と。
呪いの爪を持ち出して自由になるというのか──そうは問屋が卸さない、と、ドニーを除く祓魔師たちが剣呑な空気を発し。アーロンもまた、かかっていたはずの魔法の拘束をあっさりと破り捨てて、周囲の緊張感を一気に高める。そこで彼はふと、事態を静観するギデオンを振り返った。──なあ、ギデオン。おまえも知ってると思うけど、僕は結構人の心がないし、今は実際、ほんとに人間じゃなくなってるんだよな。だから、僕を消す気のこいつらを、ここで今、正当防衛の名のもとに呪い殺すこともできるんだけど。──それはやっぱり、駄目だもんな。
ああ、と落ち着き払って答えた。おまえは悪魔になったって、俺との約束で、二度と人の道を外れたりしないんだ。……こういう危ういやりとりは、実は若い頃にさえ、何度か交わしたことがある。そしてそのたびにアーロンは、何故かギデオンの言うことにだけは、真剣に耳を傾けるのだ。
そうだよな、じゃあまたいつか会いに来るよ。あの子のこと、そのときにゆっくり紹介してくれよな! そう言い残すなり、派手な目晦ましの魔法を一発ぶちかまして……アーロンは、忽然と消えた。ヘレナの依り代たる、あの呪いの爪とともに。
……あと、どうやってか知らないが、余計な声だけは随分と残していった。アーロンはこの数日のうちに、実は何度も祓魔師どもの目を盗んで外に繰り出し、彼らの妻たちと“夜遊び”に興じたらしい。奥さんたち、あんたらが仕事ばっかで構ってくれないって、熟れた身体を疼かせてたぜ。可哀想な話だよな! あ、あと、そこのあんたの奥さんはそっちの祓魔師と懇ろだし、そこのあんたの相棒も、あんたの妹とダブル不倫中だ。僕を追いかけてる場合じゃないんじゃないか? ま、とりあえずご馳走様!
あらゆる意味で虚仮にされた祓魔師たちは、それはもうカンカンであった。「何しやがったんだテメェ!?」と互いに胸ぐらを掴む者、一方的に蹴られながらも縮こまってやり返さぬ者、真っ赤な顔でアーロンを探し回り、本当にどこかへ逃げ去ったらしいと見れば、今度は大騒ぎしながらギデオンに詰め寄ってくる者。しかしギデオンとて、親友がいきなり飛んだ先を知っているわけもない。「手助けなんかしちゃいないし、これからもするつもりはない。追いかけて好きにぶん殴れ」と、首を横に振るだけだ。──あいつは昔からそうだ、人を引っ掻き回して、ぐちゃぐちゃにして残していく。だが今回は、ヘレナを完全に滅ぼすという正しい目的のために動いてくれるのだろう。祓魔師たちへの悪行は完全に嫌がらせだが……まあ、そうそう人の道に外れたこともするまい。自分とそう約束したのだ。
ふとドニーと目が合う。禿げた小男は、激高する祓魔師仲間たちを横目に、(あいつ、人間やめたってのにクソガキのままでいやがって……)と、困ったように天を仰いでいた。だがその、悪魔を取り逃がした祓魔師にあるまじき、心底ほっとしたような表情が──ギデオンも、嬉しかった。)

(そうして、事件の後始末をあらかた見届けたアーロンが、さらっと高飛びした翌日のこと。ギデオンは数日ぶりに、馬車で6時間の道を乗り継いで、聖バジリオを訪れた。左手には、『オ・フィール・デ・セゾン』の焼き菓子が入った幾つかの紙袋。そして右手には、薄桃色の八重咲のペチュニアでつくられたプリザーブドフラワーがふんわり詰め込まれたバスケット。病院のすぐ外の花屋で見かけ、まだ暫くは検査入院が必要なヴィヴィアンに……と買ってきたものだ。
面会カードを取るとき、受付にいたのはふたりの女性だった。やけに不機嫌そうな様子で伝票処理をしている他方とは反対に、ギデオンを出迎えた受付担当者は、これまたやけににこやかで。「きっと素敵なニュースがありますよ。あの子たちは今ご家族が面会中ですし、先に彼女さんの方に会いに行かれては?」と、堪えきれない様子で匂わせられれば、「??」と首を傾げつつ、入院棟の階段を上がったのだが。
ヴィヴィアンの病室に着くころには、そんな些細な疑問などすっかり忘れていて。顔を見られることに既に表情を緩めながら、扉を小さくノックする。が、返事がない。おかしい、今日この時間帯に来ることは伝えてあるはずだが……と首を傾げながら、「入るぞ」と開けてみれば。明るい陽射しが差し込む真っ白な病室の中──ベッドの上の相棒は、すっかり良くなったと見える体を起こし、妙に真剣な表情で……一心に読書に没頭している様子だ。一瞬ぽかんとした後、耐えかねたように小さく吹き出しながら歩み寄り。声をかけつつ、土産の花籠や甘く香る紙袋を小棚に置くと。見舞客用の丸椅子をベッド脇に引き寄せてから、相手の隣に腰を落ち着け。)

相変わらず熱心だな。何を読んでるんだ?




[PR]リアルタイムでチャットするなら老舗で安心チャットのチャベリ!
ニックネーム: 又は匿名を選択:

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字 下げ
利用規約 掲示板マナー
※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※必ず利用規約を熟読し、同意した上でご投稿ください
※顔文字など、全角の漢字・ひらがな・カタカナ含まない文章は投稿できません。
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください

[お勧め]初心者さん向けトピック  [ヒント]友達の作り方  [募集]セイチャットを広めよう

他のトピックを探す:1対1のなりきりチャット







トピック検索


【 トピックの作成はこちらから 】

カテゴリ


トピック名


ニックネーム

(ニックネームはリストから選択もできます: )

トピック本文

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字

※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください
利用規約   掲示板マナー





管理人室


キーワードでトピックを探す
初心者 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 部活 / 音楽 / 恋愛 / 小説 / しりとり / 旧セイチャット・旧セイクラブ

「これらのキーワードで検索した結果に、自分が新しく作ったトピックを表示したい」というご要望がありましたら、管理人まで、自分のトピック名と表示させたいキーワード名をご連絡ください。

最近見たトピック