Petunia 〆

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匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
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  • No.501 by ギデオン・ノース  2023-07-19 14:33:32 




(※今回の大部分を占める、「目覚めた後のギデオンの状況把握」の部分について。あまりにも長いため別途補足のSSに仕立て上げようかと思ったのですが、時間の都合上それが厳しく……読みづらくて申し訳ありませんが、当初書きだしたそのままでお送りさせていただきます。実質的なロル部分は「*」以降です。/蹴り可)



(ふと目覚めたギデオンが、病院の白い天井にぼんやりと視線を投げてから、僅かに頭を傾けて横を向いたとき。そこで付き添ってくれていたのは、見慣れた栗毛の可憐な娘……ではなく。見慣れた禿げ頭の、書類を睨んで気難しい顔をしている、中年の小男だった。
まだ意識が混濁しているギデオンが、何とも言えずに見ているうちに。ドニーの方も、その気配でようやくこちらに気がついたらしい。書類を仕舞いながら、おどけたようなしかめっ面を寄越して。「悪いな、嬢ちゃんじゃなくってよぉ」──それを聞いた途端、ギデオンの顔色がおもむろに変わった。
「……ヴィヴィアン、は?」「心配すんな、別の病室で眠ってるよ。おまえだって何回も見に行こうとしてだろうが。……はあ? 覚えちゃいないって?」
どうやら、ドニー曰く。ギデオンはこれまでに何度か目を覚まし、そのたびに体じゅうの管を乱暴に引きちぎりながら、ヴィヴィアンの元へ向かおうとしていたらしい。意識がはっきりしているのかいないのか、制止する看護師たちの言うことをあまりに頑として聞かないので、最後は業を煮やした看護婦長に眠りの魔法をぶっ放され、今の今まで無理やり寝かされていたそうだ。「……覚えて、ない」と掠れ声で言い訳するギデオンに、ドニーもやれやれとかぶりを振る。「ほんと、おまえらお似合いだよな。看護婦さんの話じゃ、嬢ちゃんのほうも、うわごとでお前の名前を呼んでるって話だぜ」
……ドニーのこの様子からして、おそらくはヴィヴィアンも無事に助かり、容態が安定しているのだろう。思わずほっと溜息をつくと、一気に体が重くなり、再び微睡みかけたのだが。それを待たずに、ドニーの呼んだ魔法医たちがぞろぞろやってきて、やれ具合はどうだだの、どんな攻撃を受けたのかだの、あれこれ質問を押し寄せ始めた。しかし検診がひととおり終われば、今度はしっかり目を覚ましたギデオンの方が、ドニーに説明を求める番で。
──あの後、自分たちはどうなったのか。
──森を出てから、何が起きたのか。
あの時駆けつけてくれた救助隊は、ギデオンとヴィヴィアンを保護してすぐ、馬車の上で手当てをしながら、できる限り最寄りにある病院へと爆走してくれたらしい。ただし行き先はキングストンではなく、街道をまっすぐ東に突っ切った先の……聖バジリオ記念病院。なんでも昨夕、王都のほうの中央病院は、ヴァナルガンド教の連中によって病院ジャックされるという大事件が起きたそうだ。とてもじゃないが担ぎ込むわけにいかなかったため、移動時間ではさほど差のない聖バジリオに向かった、という経緯らしい。確かにギデオンが今いるここは、魔法障害の治療を専門とする療養院だ──何せこの13年、“黒い館”でヘレナに呪われた子どもたちが、長期入院しているのもここ、聖バジリオである。「……因果だな」とギデオンが呟くと、ドニーは肩をすくめた。「どうせ来る予定だったんだろ。手間が省けて良かったじゃねぇか?」
あの森から聖バジリオまでは、普通の馬車なら3時間はかかる道のりだ。救助隊はそれを1時間半にまで縮め、ギデオンとヴィヴィアンを担ぎこんでくれたらしい。ヴィヴィアンは重篤な魔力切れと深刻な魔法弁損傷。ギデオンもやはり、魔力切れに負傷多数。そんな状態のふたりを、聖バジリオの医師たちは迅速に手当てしてくれた。だが体力の消耗が激しく、ギデオンはあれから丸一日以上眠り続けていたという。「じゃあ、今日は……27日か」と、少しの罪悪感を含めて呟くギデオンに。それがな、とドニーは声色を変えた。「おまえが見舞いそびれたと思ってる子どもたちのことで、ちょっとしたニュースがあるんだ。──まず、あの森で……あいつを。おまえの相棒を見つけてな?」
思わず身を起こしたギデオンが、詳しく尋ねてみるに。カレトヴルッフから事後確認のため派遣された後続部隊が、森でアーロンと合流したらしい。ドニーが状況を知ったのもこの時で、死んだと思っていたアーロンが悪魔の姿で出てきたのだから、腰が抜けるほど驚いたそうだ。だが当のアーロンはといえば、祓魔師に取り囲まれながらも飄々と、「久しぶりだなドニー! ……少し禿げたか?」なんて抜かす始末。奴は一切抵抗せずに拘束を受け入れたものの、妙なことを口走ったという。──なあドニー、僕を協会に引っ立てる前に、大事な頼みがあるんだ。聖バジリオに連れて行ってくれないか? あそこで眠ってる子どもたちを、今の僕なら目覚めさせられるんだ。あんたは知ってるだろ。僕とギデオンが捜しに行って女悪魔に呪われた、あの子たちのことだよ。
祓魔師たちは揉めに揉めたそうだ。何せキングストンの方で、カルト集団による病院ジャック、なんて物騒な事件が起きたばかりなのである。病人や怪我人のいる神聖な病院に、悪魔を連れ込んで良いわけがない。聖バジリオだってみすみす受け入れたくはないだろう。──それでも最終的には、ドニーが強引に押し通した。もしアーロンが約束をたがえれば、自分とギデオンが責任をもって絞首台にのぼる、と言って。
「巻き込んで悪かったな。でもま、それで説得できて、結果的には大正解だったみたいだ」と。ドニーは穏やかな顔で微笑んだ。聖バジリオの医師たち、祓魔師たち、近隣の教会から駆り出した聖職者たち。その三者が厳重に監視し、いつでも処刑できるという状況下で、アーロンは。五つの黒い爪のような、禍々しい触媒を用いて、子どもたちに焼き付いている複雑怪奇な魔法陣を、ほんの数時間かけただけで完全に解き明かしたらしい。子どもたちはまだ眠ってはいるが、それは呪いが残っているからではなく、13年ぶりの起床に備えて身体が準備してのことだそうだ。
──あの子たちは、目覚めるんだよ、ギデオン。
──おまえのしてきたことは、今日に繋がってたんだ。
その言葉を聞いたときの情動は、とでもじゃないが声にならなかった。顔を背けて激しく肩を震わせるギデオンに、ドニーも窓の外を眺めながら、「良い日だよな」なんてほざいて、放っておいてくれる有り様で。暫くして落ち着き、顔を拭ったギデオンが、「……ヴィヴィアンは?」ともう一度尋ねれば。ドニーは顔をこちらに戻し、少し気づかわしげに告げてきた。「一応、ほんとに、ちゃんと安定してるそうだ。呪いが残ってるなんてこともないそらしい。ただ──ずっと、目覚めなくてなあ……」

──数時間後。医師の許可を得て病床を降りたギデオンは、廊下の手すりに凭れながら、ヴィヴィアンのいる高度治療室へ向かった。辺りを忙しなく行き交っていた看護婦からは、「ご親族の方ですか」と問われ、違うと答えれば立ち入りを拒まれてしまったが。遠目からなら、と中に入っていった彼女が、病床のぐるりを覆っていたカーテンをそっと開ければ。そこには、無数の管に繋がれ、酸素マスクを宛がわれた、痛々しい姿のヴィヴィアンが、ぐったりと横たわっていて。──ふらり、とよろめいたギデオンは、そこで再び、心の底から沸き起こる恐ろしさを思い出したのだ。
それからというものの。医師に見咎められて連れ戻される以外の時間、ギデオンはずっと、ヴィヴィアンの病室の外の椅子に座り通して過ごした。別に何をできるわけでないし、親族でもない自分では、面会謝絶の彼女のそばに近寄っていい許可も出ない。それでも、何だっていいから、ヴィヴィアンのそばに……何かあれば駆けつけられる距離にいたかったのだ。
一度、冒険者特有のシステムである保証人契約書……通称“相棒届”の契約内容について、医師に尋ねられたことがあった。ギデオンが彼女と相棒関係にある年って、本人の代理で特定の手術に同意する権限があるか、確かめたかったのだろう。が、去年契約したばかりで、代理の許可を出す条件はまだ満たせていない立場だというと、それ以上構われることはなかった。──医師は単純に、そこからまた別の手立てを考え始めるだけだったが。ギデオンにとっては、ますます歯痒く、気分が落ち込む出来事だった。自分にその権限があれば、ヴィヴィアンのためになることは、何だってしてやりたいのに。事実上の関係はともかくとして、今の自分は──仕事上の相棒でしかないのだ。
あれ以来、アーロンの拘束のため近所の教会に詰めているドニー曰く。ヴィヴィアンが運び込まれてすぐ、カレトヴルッフもそれを把握し、彼女の唯一の肉親であるギルバートに伝書鳩を飛ばしたらしい。だが、フィールドワークに勤しむ魔法学者の彼は、今は海外に滞在中で、すぐには連絡が取れそうにないという。第二の緊急連絡先であるヴィヴィアンの乳母アルヤも、ちょうど国内旅行をしていたところで、手紙のやりとりは問題ないが、やはり今すぐには駆けつけられない状況らしい。先日の病院ジャックの事件で、国内のあちこちの主要街道が封鎖されているせいだ。
──ヴィヴィアンのために、何かしらの重要な決断を下せる立場にある人が、すぐにはここに来られない。そして自分は、今ここに、ヴィヴィアンのすぐそばにいるのに、何ひとつできる立場にない。これほど苦しいことも、これほど無力感に苛まれることもなかった。椅子の上で項垂れるギデオンを見かねたドニーが、言葉もなく肩に手を置いてきたが、何の反応も返せないままだ。
やがてとうとう、ヴィヴィアンの主治医が、諦めたような顔でギデオンの前にやって来た。「お尋ねします。患者様とのご関係は?」……おそらく、医者としての体面上、尋ねねばならないのだろう。ギデオンは隈のついた顔を上げ、静かな掠れ声で答えた。──自分は、彼女の恋人だと。
それでようやく、面会の許可が出た。ギデオンがヴィヴィアンのそばに留まり続けて、三日目のことだった。)







(病室の窓の外が暗い。いつの間にか、夜もとうに更けていたようだ。
ギデオンが顔を上げると、ヴィヴィアンと管で繋がれた水晶が、一定の間隔で淡い光を明滅させていた。これはどうやら、患者の脈拍の状況を映し出す魔導具らしい。素人のギデオンが見る限り……未だに、ゆっくりと弱々しいままのように見えている。医師たちやドニーの様子からして、これでも危篤は免れているようなのだが──いったい全体、どうして安心できるだろうかz。
あちこちから魔素を流し込まれているヴィヴィアンを見ていられず、管を動かさないように気を付けながらそっと握った手のそばに、再び項垂れた頭を寄せる。もうずっと、こうして祈り続けていた。今までろくに唱えたこともない加護の願いの祈りを、今更聖ロウェバが聞き入れてくれるはずもないが……それでも、何かはしたかったのだ。数時間ほど前、入院以来初めてヴィヴィアンの手を取った時。ヴィヴィアンの目元から涙が一筋流れたのを、ギデオンはたしかに見た。こうして手を重ねていれば、自分が傍にいるのだと、彼女も感じられるのではないか。そう祈るような気持ちで、もうずっとこうしている。
そこからさらに、二、三時間か……四時間ほど、過ぎただろうか。窓際のカーテンが微かな夜明けの風に揺れ、ごく仄かな光が病室を浸し始めた頃。二十分ほど椅子の上で眠っていたギデオンは、微かな呼び声に目を開けて、顔をゆらりとそちらに向けた。そして、そこにいるヴィヴィアンが、目を開けているのを見た瞬間──それまでの疲れなど一気に吹き飛んで。ヴィヴィアンの顔のそばに身を屈め、自分はここにいると伝えながら、こちらも彼女の名を呼んで。)

──! ヴィヴィ、アン……ヴィヴィアン、ヴィヴィアン!




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