匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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まあ、男として少なくとも一箇所は勝ってたな。
(しばらくは見たことのない気落ちぶりだった相手から、やがて猛烈な勢いで怒りの声が噴き出しはじめれば、喉を鳴らして相槌を打つ。よりによって文句の付け所がそこなのだから、彼女の善良さが窺い知れるというものだ。話しながらも巡らせていた視線はひっそり佇む安宿に止まり、開放された扉に近寄ってその奥を覗き込む。まるで両脇の店に潰されるようにして縮小してきた店のようだが、古くとも中は小奇麗に整えられ、カウンターにいる店員も真面目に記帳に勤しんでいた。宿によっては地元ギルドとの結びつきが強いものだが、ここなら大丈夫だろう。声をかけるべく相手の方を振り返り、そこで初めてしょんぼりしていたことに気づくと、ふっと表情を和らげて。)
……心配するな。そのうち嫌でも思い知らせてやるさ。
(手を伸ばし、栗色の髪をくしゃりと一度だけ撫でる。そこには少なからず、連中の下卑た手出しを耐えきったことへの労いと、自分以上に、ギデオンのために怒ってくれたことへの感謝の気持ちが含まれていて。)
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