匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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……ああ。
(ヒーラーとしての本能か、まだ状況を飲み込めていない様子ながらも次々治療してくれる相手。ようやく全てを終えてこちらを見つめる潤んだ目元は、安堵の笑みを浮かべながらも、涙ですっかり溶けてしまったマスカラのせいで、どす黒い青痣ができたように痛々しい。否──先程のヴィヴィアンは、それに匹敵するくらい強いショックを受けていたのだ。そうわかっていたから、未だ震えの止まらぬままか細く請われた哀願に、静かに起き上がりながら頷き。迎えるように広げられた細い両腕の中に大きな上半身を寄せると、自分も彼女の後頭部や背中にそっと手を回し、ごく柔らかに、けれどしっかりと抱き締めてやる。……ふわふわに乱れたヴィヴィアンの頭を何度も撫でたり、汚れてしまった華奢な背中をさすったりする手つきによって、己の理性がすっかり戻っていることは、上手く伝えられているだろうか。穏やかになった呼吸を、彼女のそれにゆっくりと溶け込ませていく──そうして重なり合うことで、自分の取り戻した落ち着きを、ほんの少しでも分け与えられるように。上階で遠く聞こえる大捕り物の騒ぎは少しずつ鎮まりはじめているから、感謝や謝罪、労わりの言葉を紡ぐには、彼女の耳だけに届くような低い小声で充分だった。そうして何度も何度も優しく撫でさすりながら、自分と相手双方の無事を実感できるよう、頭を寄せて囁きつづけ。)
ありがとう、おまえのおかげで戻ってこられた。
……怖い思いをさせてすまない……頑張ってくれたな。本当によく、頑張ってくれた。
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