匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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……っ、
( ジャネットから指示が飛ぶ間も、未だエルノーはビビの手を握り、優しい気遣いを装った雑言を繰り返し続けている。ステージから響く俗っぽい競売主の木槌の音や、美しい奴隷の登場に観客席から上がる下品などよめき、そんな聞くに絶えない騒音を切り裂いて飛びこんできたのは──大好きなギデオンが自分の名を呼ぶ声。それだけで無闇に掻き回され、傷つけられた心がすっと落ち着いて、もうずっと俯いていた顔を上げる勇気が湧くのだから、我ながら単純なものだ。目の前のエルノーにバレないよう、ギデオンからの指示にタップ音だけで返事をする。お互い顔も見えない中やり取りをしているというのに、一度も互いの返事がかち合って混線する様子のないやり取りに、ギルドメンバーたちが苦笑していたことなど知る由もない。また1人、罪のない奴隷の競売が終わったらしい。一瞬 静かになった小劇場で、ギデオンの指示通りエルノーの誘いを受けようとして───絶句したギデオンの様子を伺おうと周りを見回し、ステージ上に"それ"を見つけてしまえば、相棒同様目を見開いて絶句するしか無かった。「紳士淑女の皆様、御機嫌よう」そんな隙のないお辞儀とともに始まったそれは、好色な淑女達だけではなく、ステージ上の"商品"が、美女から櫛に変わって興味を失ったように見えた、露骨な紳士たちさえも引き込む不思議な魅力を纏っていた。『とあるお"まじない"をかけると、この櫛で髪をとかしたあの子の心を必ず手に入れることができる櫛』この1ヶ月、嫌になるほど耳にした言い回しに、再びイヤリングに手を伸ばしかけた瞬間──「100だ」と。確かに、会場の耳目がステージに集められている今は、踏み込む絶好のチャンスだったろう。先程からビビの隣で、3000、20000、と競売に参加するふりをして、密かにカウントダウンをしていたエドワードが大きく声を張り上げたかと思うと、会場の扉が大きな音を立てて、外から勢いよく開かれる。「動くな!カレトヴルッフ陸軍だ!」と響いた怒声に一瞬、静まり返った会場は、流石に野盗の巣窟とは訳が違う。参加者の殆どが、体力的に勝ち目のない憲兵相手に暴れるよりも、いかに従順に振舞って保釈金を積み、今夜のことを揉み消せばいいと考えていたに違いない。しかし、そうされて困るのは──証拠がたっぷり詰まった会場を、現に抑えられている主催者達だ。人殺しさえ厭わない悪党どもが、いっそ騒動の隙に逃げ出してやろう、そう考えてもなんらおかしくはなかったというのに、あまりの悪意に気づくのが遅れた。急に濃くなった蛇涎香の魔素にハッと顔を上げ、「口と鼻塞いで!吸わないでください!!」そう叫んでももう遅かった。香炉の近くにいた参加者が意味不明な奇声をあげたかと思うと、会場は蜂の巣をつついたかのような大混乱に陥って。 )
──ギデオンさん!!
( / こちらこそ、暖かいお気遣いをありがとうございました。ああ仰っていただけて大変安心すると共に、これからも二人の冒険を見守っていける喜びで胸がいっぱいです。これでまたご相談のお返事に時間をいただいて、本編の進行に遅れを来たしますと本末転倒ですので、誠に申し訳ございませんがお言葉に甘えて、こちらでお返事とさせていただきます。中々お返事敵いませんが、いつも最後まで読ませていただいております。
当方もまだ今回は場面転換とはいえ、1000文字を超えておりますし、こちらの方も無理せず少しずつ理想に近づけていければと思っております。前回当方がやりたかったことも全部気づいていただけて本当に光栄です。
今後の展開についてもご共有ありがとうございました。エルノー夫人に問いただそうとするところにつきましては、当方の技術で綺麗にまとめきる事が難しかったため、以上の形とさせていただきました。かなりあっさりで申し訳ございません。大枠につきましては確認しておりますので、是非そちらでよろしくお願い致します。/蹴り可 )
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