匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(若い冒険者の男女が顔を寄せ合い、名簿を睨んで唸る姿。それは、既に熟れきったベテラン一同からすれば、非常に微笑ましいことこの上ない光景──の、筈なのだが。ギデオンただひとりだけは、どこか落ち着かない心地に陥っているらしく。自然な風を装って相棒を盗み見ること数度、暫くそこに目を留めてから、車窓の外へと無理やり?がすこと数度。そうしてしまいには、相手は自分も良く知るアランだというのに……と俯いて自分を戒めている、その向かい側で。女憲兵ジャネットの瞳の奥に、とうとう仄暗い火がついた。かと思えばその真横、彼女の連れのエドワードときたら、楽しそうに同期とじゃれ合うヴィヴィアンを、感情の読めぬ面持ちでじっと眺め続けている。そろりと顔を見合わせたアリス、デレク、カトリーヌの胸中の声は、きっと一言一句違わずに揃っていたことだろう。──今夜の舞踏会は、こちらも間違いなく荒れる、と。)
そうだな、多少は飲んだ方がいい。
(さて、そんな嵐の予感とは程遠い、優美な管弦楽曲に満たされたホールにて。先程相棒の見つけてくれたラクロワ卿への挨拶は後に控える計画だからと、胸を高鳴らせている様子の相手の誘いにすんなり従い、シルクの白布がかけられた賑やかな一卓に向かう。“グレゴリーとリリー”同様、新婚なり婚約中なりの男女が集っているらしきその一帯は、いきなりぶち当たるには分の悪い“サロン”の常連も見当たらない。ボーイたちが配って回っている色とりどりの酒のグラスも会話の糸口になり得るだろうし、自分たちの独自調査の手始めにはお誂え向きと言えそうだ。そうして、他の客を避けながらゆったりと歩く道すがら、ギデオンの左腕を抱く相手の側に不意に頭を屈め。さらりと低音で囁いたのは──グランポート以来二度目となる、お約束の揶揄いの台詞。別段なんてことはない、大きな社交界に不慣れな婚約者をリードするのも自分の仕事であるはずだ。などと言いたげな殊勝な表情を、こちらを見上げる相手にわざわざ向けてみせる。しかし僅かに口角を上げているのは、やはり確信犯であることをありありと示していて。)
……あのシャンパンなら、リリーでもそう酔わないだろう。
(/いつもお世話になっております。どうかお気になさらず、今回の更新分も楽しみにお待ちしておりました……!別案等ございません。せっかくお気遣いいただいたのに恐縮ですが、些細な返事でもお伝えしたいと思い立ち、こちらも少しだけ顔出しを。朝夕が冷え込みやすくなりましたが、主様もどうぞ温かくしてご自愛くださいませ。今後しばらくの舞踏会編も、こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。/蹴り可)
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