匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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ギデオンさ……キャッ!っ……!
( 錯乱したワーウルフの鋭い牙と、太い爪が振り下ろされる光景が眼前に迫る。その迫力に目を瞑ってしまいたくなるが、ここで自分が倒れれば次に狙われるのは市民達だと分かるくらいの判断力は残っており、元々大きな目を意地でも見開けば、詠唱と共に杖に手を伸ばしながら負傷ダメージを少しでも減らすべく、その動きを見極めんと。腕の1本くらいくれてあげる──咄嗟に半身を捻り歯を食いしばり、痛みへの覚悟を決めたその瞬間、真横に吹き飛ぶ魔物とその奥に現れた男の姿に、心底安心して思わずその名を漏らしかけ。まさか地面に引き倒されたのは予想外で、間抜けな悲鳴が口をつくが、倒された際に目に映った雌ワーウルフの巨大さには思わず息を飲んで。独断で相手に迷惑をかけた挙句、その当人に助けられ、今も抱えられお守りをされている現状に、唯一残った矜恃は目を塞がないことくらい。無様な自分から少しでも成長する糧を得るべく、必死に見開いた目に映るギデオンの勇姿はあまりに美しく、突き立てた剣と精悍な横顔など昔憧れた伝説の冒険者そのものに見えた。地面が揺れる振動としばしの静寂、ふっと体の力が抜けて安心を自覚すると、自分を強く抱き締める腕や吐息、頬に伝わる心臓の振動に、ギデオンのそれよりも更に大きく、ドッと心臓が鳴ったかと思えば、早鐘の様にその音は繰り返され、顔どころか首の付け根まで真っ赤になって飛び起きようとして。そうして目に映ったギデオンの顔に、好き、大好き、かっこいい……と、キュンキュン主張する心臓と、その腕の中にいつまでもいたい気持ちを振り払い、仕事への使命感を奮い立たせて何とか自分の仕事である周りの負傷状態の確認を。
もし引き止められず立ちあがれたならば、ワーウルフに驚き転んで膝を擦りむいた子供の手当をしようとするも、精神の動揺はありありと魔法に反映され、子供の膝どころか、傍の年寄りの長年の腰痛まで治し、半径3m程の雑草を芽吹かせ満開の花を咲かせ、畑の持ち主に悲鳴をあげさせるだろう。 )
ギ、ギデオンさん……も、離して、ください!
皆さんお怪我は!?
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