匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(素直に話をやめてくれたまでは良かったのに、再びぎゅっと片腕に抱きつかれ──実り豊かなそれも当然柔く押し当てられ、しかもギデオンとの関係を「私の片思いなんです」なんて紹介されようものなら、ギデオンの居心地の悪さはそれはもう凄まじいもので。それでも相手を振りほどくことはなく、ばつの悪そうな顔をふいと真横に逸らして「…………」とされるがままどまったのは、相手の話が己も承認した否定しようのない真実だから、そしてアイリーンの面を見るのが心底恐ろしかったから。案の定、乱れ髪を整えきったアイリーンはまず相手の挨拶に感心しきり、「もうほんとにすごくよくできたお嬢さんじゃないの……人出が少ない弱小ホテルだからこんなことしてるけど、『ウトピア』支配人のアイリーン・カーターよ! ビビちゃんならうちはいつでも大歓迎だから、好きな時にいらっしゃい」なんて、名前から相手の愛称をするりと言い当てたかと思えば。次いでギデオンの方をぐりんと向き、「こぉんないい子が、あんたに健気に『片想い』? それもここ最近の話じゃなさそうな感じで? へぇえ、随分良いご身分ねえ………?」……見なくともわかる、これは絶対に凄絶な笑みを浮かべている、奴の凶暴さを知る連中の間で“狩りの構え”と恐れられたアレである。冷や汗をだらだら流すギデオンは何ら言い返すことができず、悪魔の視線の集中砲火でただ蜂の巣にされるのみ。それでもその後思わず彼女を振り向いたのは、盛大なため息をついたアイリーンから、「どうせあんたの方は、『サテュリオン』の女帝に言いつけられて動いてんでしょ」と、事の経緯をずばり見抜かれたからだ。なぜわかる、と端的に尋ねれば、「だってあそこ、一番人気のアドリアーナが客の奥さんに“呪われた”って、今すっごく大騒ぎだもん」……どうやら、やり手婆がギデオンに話した事件も、既に知っていたらしい。「確かにここいらじゃ今、変な『おまじない』が大きなウワサになってるわよ。娼館の女の子たち、可哀想なくらい怯えてる。ねえ、あたしが聞きかじってる話は全部教えてあげるから、とりあえず奥行こっか。ここでこのまま立ち話もアレでしょ?」そう言ってウインクすると、まっすぐな髪をさらさら揺らしながら立ち上がり、カウンター裏の扉を開けて休憩室らしき部屋の中へ。そこにいる誰かと何やらやかましく言い合っているのは、休憩中らしい相手に受付を代われと言っているのだろう。男性店員は不満そうに反論しているが、相手は口八丁手八丁なあのアイリーンだ、結果は言わずもがな。男の呻き声が聞こえてきた後、「いいよ、入っていらっしゃーい!」なんて元気な声がかかれば、ため息をつきながらふと隣の相手を見下ろし──ぐ、と軽く睨みつける。何をアイリーンと親しくなってるんだ、という恨みがましい非難である。ついでにいつぞやよろしく、自由な手の方の裏拳を持ってくると、相手の額にこつんと一撃。パチッと軽度の雷魔法を炸裂させた隙にするりと腕を振りほどけば、念入りに物申しつつ、カウンター裏へ回っていき。)
頼むから、俺の知らないところでここに遊びに来たりしないでくれ。……あいつ、おまえ自身のことだって丸裸にするつもりだぞ。
(/念の為共有です。アイリーンが想定以上に濃いキャラになってしまいましたが、お好きなように動かしたり喋らせたりしていただいて構いません。展開づくりを煩わせていたら申し訳ないです……!/蹴り可)
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