匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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……──ゎッ、わァッ!!
( なんの抵抗もなく外された腕に、少しの寂しさなどという甘いものに浸っていられたのも束の間。一歩踏み出すよりも前に、サラリとかけられた言葉の意味を捉えかねて振り返ると、ギデオンがこんな涼しい顔をしている時は大抵、揶揄われている時だと分かる程度には共にいる時間も長くなってきた。一瞬怪訝に眉を顰めれば──分かってたなら教えてくださいよ!!という心からの叫びは声にもならなかった。とはいえ、そうして行き場のない羞恥を両手に握って目を細め、どんな主張も言葉にならないといった風にワナワナと唇を震わせていたものだから、寧ろアイリーンの興味深いお喋りを、よぉく聞き取ることができたのは僥倖といったところ。女性の唇から飛び出た聞き覚えのある名前に、ピクリと睫毛を震わせると──( リリスの"子たち"?カロリーヌ……?新しい子、"相変わらず元気"ねえ……はあ、何時間も、まあベッドでお話ですって! )と、項垂れていくギデオンと引き換えに、すっかり熱の引いた顔に浮かべられた笑顔はどんどん深まるばかり。とはいえギデオンの女癖の悪さは、上の世代の冒険者たちには広く知られているし、ビビ達世代でも歳若い頃からギルドに関わっていた者たちには、エヴァンズ氏が歌劇団の歌姫の隠れファンだということや、カトリーヌの料理の才が絶望的ということ同様、薄らと勘づかれていることの一つである。アイリーンの言い草からして、最後に訪れてから時間も経っている様だし……勿論いい気はしないが、それを責めるのは流石にナンセンスだ。それ故にアイリーンの話を聞き終わって覚えたのは、怒りというよりは呆れと、噂は本当だったんだなあという感慨のみ。それでも先程大いに揶揄ってくれた復讐と、本人からは絶対聞けないような昔話を求めて、打ちひしがれるギデオンを一瞥してから、態と軽薄な態度でお喋りなアイリーンへ近づけば、カウンターに肘をつきながら語尾にハートがつきそうな甘ったるい調子で首を傾げて。 )
あー!やっぱり遊んでるんだー!
さっき、私には他所では遊ばないとか言ってたクセに……ねえ、私はお姉さんのお話もっと聞きたいな
この人ここにもよく来るんですか?
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