匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(俺はいったい何を。自ら煩労を招くつもりか──と、内心呻き声をあげていた一方で。ギデオンの指摘に不平そうに言い返しかけたかと思えば、素直にばつが悪そうに引っ込んだり。それをうやむやにするかの如く、ついでに良い機会だからと、ご満悦な表情で大いに甘えかかってきたり。相手のそんな、くるくると目まぐるしく変わる、何気なくも色とりどりな表情を目の当たりにすれば。……まあ、仕方ないか、なんて、甘い考えに傾いてしまうのも、否定しようのない事実だった。おそらくギデオンの胸にはまだ、先ほど彼女を傷つけた件の罪悪感が強く残っているのだろう。そうだ、それに違いない、ならば仕方がない、払わねばならぬ代償というやつである。そうして、先月から確かに芽生えつつある感情から諦め悪く目を逸らすように、罪滅ぼしと思って一種の覚悟を決めてしまえば。赤くなりながら慌てる相手を、緩いため息をつきながら見下ろし、気にするなと肩をすくめようとして──)
いや、別にあの女が有力な情報を持ってると確信してたわけじゃないから、気にしなくていい。……、
(──そしてふと、かすかに目を見開く。そうだ、いっそ共同捜査ならば、計画を誘導することで先ほどのような鉢合わせを回避できるではないか。疚しい相手には裏で単独の聞き込みをしておいて、そこで得た情報を彼女との捜査に持ち込めばいいのだ。ヴィヴィアンと動くことで彼女の信頼をより確かに取り戻せるし、やり手婆に押し付けられた調査も一層早く片付けられる。天啓を得たとばかりにはっきり動き始めた頭は、明確な筋道を組み立て始め。──伯母の店を引き継ぐことになったのよね、と、いつかの枕もとで煙草をふかしていた女の声など、今のギデオンの頭からはすっかり抜け落ちている次第。致命的なミスによって自ら破滅に突き進んでいることを知らぬまま、こちらもいつも通りの仕事モードを取り戻すと、真剣な表情を浮かべ、てきぱきした声音で告げて。)
あっちには後日出直しておくから、差し当たってはお前の情報をもとに動いていこう。明日は昼からグレンデル狩りが入ってるから、できれば暇のある今夜のうちに、お前の方で得た心当たりをあたれるだけあたっておきたいんだが……それでも構わないか? 遅くなったら、下宿先に送っていく。
(/改稿漏れ訂正です。たびたび失礼いたしました!)
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