匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(夕刻もとうに過ぎ、夜の帳が下り始めた薄暗い路傍にて。相手が背けた目元こそよく見えずとも、その声音や熱く震える息遣いから、今にも溢れだしそうなものを必死に堪えているのがひしひしと伝わってきて。最初こそぎょっとしたギデオンも、すぐに苦々しく顔を歪め、何も言えずに視線を落として立ち尽くす。ヴィヴィアンを──初めて、泣かせた。他でもない自分のせいだ。その事実に酷く打ちのめされるが、彼女のショックは自分より余程大きいはずで、それを思うとますますやりきれない。──彼女とは別に恋人同士でもないのだから、ギデオン自身に操立てをする義務はない。だがそれでも、自分は彼女の好意を知っていて、応じずとも受け止める関係を了承している。彼女の心を、適当に扱って良いわけがない。……本当に大事なら、正しい言葉を慎重に選ぶべきだ。そう思考を落ちつけると、顔を上げ。近くの浮浪者が修羅場と見て野次を飛ばしてきたのに、「失せろ。……聞こえなかったか、失せろ!」と、珍しく声を荒らげ追い払ってから。未だあちこちに目をさ迷わせつつ、ぽつりぽつりと話し始め。)
……さっきの女と会っていたのは、依頼されてる案件の、聞き込みをするためだ。ああいう店だから、向こうにもそういう目的だと思われて……ああいう風に振る舞わせて……驚かせてしまったが。
あの日にお前と、あんな会話をしておいて……他所で遊び呆けたりしないし、……お前に、嘘をついたりもしない。──嘘は、つかない。
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