匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(“ヴィヴィアンが魔獣の群れに攫われた”。想定外の緊急事態に船乗りたちは血相を変えて大騒ぎしているが、その中にあって、肝心のギデオンだけが普段の冷静さを取り戻すことができたのは、他ならぬ彼女のおかげで。……あの賢いヒーラーは、こんな時でもギデオンの動揺を見透かしていたのだろうか。上空に打ち上げられた信号花火の健気な赤は、燻る焦燥を意地でも鎮めさせるには充分過ぎる代物だった。無論あの状況で何もないわけがない、相手の置かれた状況にはまったくもって問題しかない。それでも彼女があのように伝えた以上、今はただ無事を信じ、最善の手を尽くすのが自分の役目。そう切り替えれば素早く仲間を振り返り、策を言い合う野郎どもに荒っぽく呼びかけはじめて。──それから数十分の後、近場で見つかった無人の山小屋から幾つか雪靴を失敬すると。夏空の下、一筋だけ白く凍った湖の上を懸命に進んでいく、物々しい雰囲気の男たちの姿があった。湖水を割り開いて陸路を作り出す案は流石に無謀が過ぎていたが、一時的な足場として行く手をしっかり凍らせていくくらいなら、船乗りたちの負担もそこまで大きなものにならない。雪靴には限りがあるため、他の連中はつるつる滑りながら必死に後ろをついてきているものの、ギデオン自身は当然の如く先行組だ。熱操作の魔法に長ける者の先導に従い、広大な湖の水平線を睨みながらひたすらに足を駆る。そうしてようやく見えてきたアーヴァンクの巣、ギデオンたちの侵入に気づいて飛び出してきた迎撃部隊とは、即席の氷上で激しい戦闘を繰り広げた。こちらは魔剣持ちがギデオンただひとりのみだが、船乗りたちは優秀な水魔法の使い手だ。周りの湖水をドラゴンやヒュドラの形に変え、アーヴァンクたちに叩きつけることで襲撃の勢いを削ぎ、そこにギデオンが剣の一太刀を振り下ろす、そうして互角の戦局が燃え上がる。ギデオンも含む何人かはアーヴァンクの鋭い牙に腕や足を切り裂かれたが、重傷でもなければいちいち気にしていられない、自分たちの手元から誘拐されたのはあのヴィヴィアンなのだ。──そして、アーヴァンクたちからすれば、自分たちの手元から奪い返されようとしているのもまた、あの美しい娘なのだ。その場の全員に全くその自覚はなかったが、氷上の男たち、もとい雄たちは皆、だれもが彼女ただひとりを巡って、むさくるしく殺気立っていた。怒号や威嚇の声を飛ばし、剣に牙に、水に拳に、それぞれ本気でぶつかり合い、最後にはただの大乱闘、果たして傍目にはどちらも似たようなしぶとい暴れっぷりである。船乗りたちとアーヴァンクたちとでプライドをかけたただのボクシング大会が始まり、動けなくなったものは人も獣も声援だけを飛ばすようになった頃、ギデオンはと言えば、どさくさに紛れて場を抜け出し、荒い息を整えながら流木の山を駆け上がっていた。それらしい場所を血眼で探し回り、ばったり出くわした見張りのアーヴァンクが悲鳴じみた警告を発するや否や、無慈悲な雷魔法をバチバチと放って沈める。やがて、巣の出入り口をようやく見つければ、誰のものかもわからぬ返り血を浴びた姿で、こわばった表情で飛び込んでいき。暗がりにじっと目を凝らせば、すぐに彼女は見つかった。──アーヴァンクたちにのしかかられ、それでも必死に、顔を上げてこちらを見ようとしている。まだ無事だったが、“襲われている”。状況をそう読み取った瞬間、ギデオンの顔からは奇妙なほど表情が抜け落ち、音を鳴らして構えた魔剣が酷く冷たい光を帯びた。そうして曖昧に告げた、妙に硬質な響きの声は、そこのアーヴァンクを屠って今すぐにでも助け出すと伝えていて。)
…………そこを、動くなよ。
(/そう仰っていただけてほっとしました。今後の展開についても快諾いただきありがとうございます。新ストーリーに関する主様の構想について、もちろん首を長くしてお待ちしております、非常に楽しみです……! どうか無理はなさらず、ゆっくりとご自由にイメージを膨らませてくだされば幸いです。
今後の展開ではなくギデオンの過去に関してですが、裏設定に近いものとして、若い頃の火遊びに特定の傾向がありそうだなと考えておりました。具体的には以下のようなものです。
ギデオン:基本的に不特定多数と関わり、逆に一対一の関係性は持ちたらがらないので、落ち着いた振る舞いに反し表面上は放蕩。しかし大事なところの倫理観はしっかり備えており、相手を騙すような嘘はつかない。20代半ばの茶髪の女性が好み。軽い関係を求めて自分に本気にならない女性を選ぶ傾向。
アーロン:基本的に一度にひとりとのみ関係し、恋人らしい付き合いもきちんと重んじるので、砕けた振る舞いに反し表面上は誠実。しかし大事なところで倫理観が欠けており、嘘をつくことに躊躇いがない。自分より年下の黒髪の女性が好み。本気の関係を求めて自分に尽くす女性を選ぶ傾向。
この先描写したい、盛り込みたい内容というよもり、あくまでも参考になれば程度のメモです。広く浅くのギデオンと狭く深くのアーロンで傾向にだいぶ差がありますが、その辺りはお互いほどほどに立ち入らない暗黙の了解があったのではないかと想像しております。主様のイメージと違う箇所、好みの塩梅に擦り合わせたい箇所などあれば、何なりとお申し付けください。また今回は軽い共有に留まりますので、質問相談等の特筆事項がなければお返事には及びません。こちらこそ、目下進行中のアーヴァンク編も引き続きよろしくお願いいたします……!/蹴り可)
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