匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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うっ……このっ──……?
( 巨大な巣の完成度を見ればもとよりわかっていたが、青黒いアーヴァンクの屈強なうえになんて知能の高いことか。後方支援に気付いたらしい一匹の鳴き声で、他の仲間たちも一斉に頭を擡げる光景にぞっとして息をのめば、効率も何もなくがむしゃらに杖を振るう。その杖先、風魔法が当たって落ちた木の枝で、船員たちの姿を隠すことには成功したものの、その代わりアーヴァンク達の視線が自分に集中するのを感じれば、冷や汗とともに上がる口角を感じて、逃げずに杖を握りなおしたのがまずかった。一斉に向かってくるアーヴァンク達に、とっておきの魔法を叩きこんでやらんと杖を握りなおしたところで、その動線が不意に直接ビビでなくその足元に向かえば、あっけなく崖先から宙に放り出されてしまう。幸か不幸か大きく投げ出されたおかげで、なんとか体勢を立て直し、水辺の生物特有の筋肉の上に脂肪の付いた丸い腹目掛け、苦し紛れに踵を振り下ろすも──(?何で直接攻撃してこないの?) 拭えない違和感を抱いたその瞬間、まだ南国の気配が残る青い空と真っ白な入道雲、先程まで自分が立っていた大岩のえぐれた崖先、枝の隙間から覗く船員たちの慌てた表情──ギデオンの表情は死角で見えなかったが、真っ逆さまに落ちていく視界が、やけにゆっくりとはっきり見えた。その状態で足元の魔獣を見やれば、そのあまりの敵意のなさに慌てて脚を引っ込める。ビビを受け止めた逞しい体躯からはやはり、筋肉に全く力を込めていない最低限の衝撃だけが、臀部から全身に伝わって。一連の行動の不可解さに一瞬呆けてしまえば、瞬く間に四肢を抱き込まれてしまい。しまったと慌ててもがけば万力の様な力で手足を絞められるも、ビビが思わず苦痛から小さく声を漏らすと、それ以上ねじられるどころか少しだけ緩められ、キュウゥッと申し訳なさそうな鳴き声をかけられる始末。幸い杖も一緒に抱き込まれているため、逃げ出そうと思えばできなくもなさそうだが、水中に落とされてももう一度捕まるだけ、何より敵意のなさそうな相手を攻撃するのは気が引けて、 戸惑っている内にアーヴァンク達は飛沫をあげて泳ぎ始めてしまう。その時背後から聞こえた必死な声に、唯一動く頭を振り仰ぎ、珍しく余裕のないギデオンの姿に、やっと追いついてきた恐怖が心臓をバクバクと高鳴らせるも、震える手で杖を握りなおし何とか打ち上げた花火の色は赤。情報伝達魔法が発達してからは廃れゆくばかりの古臭い手法だが、赤い狼煙の意味は“問題なし”。流石にこの状況に問題がないとは言えないが、すぐに捕って食われることはなさそうだと、冒険者として最低限の安否を相棒に伝えようとして。 )
……これ、くれるの?ありがとう。
( そうして連れてこられたのはかなりの上流、最早キングストンからも遠くないダム湖に作られた古く小さなアーヴァンクの巣。その中で一番立派な流木の上にそっと降ろされれば、ずぶ濡れになった体と杖をかき抱き周りを見回す。その間、元凶のアーヴァンク達といえば、先程までの勢いは何処へやら、こちらを襲うでも興味をなくして捨てたという感じでもなく、遠巻きにもじもじと時たまこちらを見つめる姿は、午前中の船員たちの姿を彷彿とさせる。流石に出入り口の警備は固そうだが、ビビが半歩近づけば半歩後ずさり、それでも執拗に視線は外さないアーヴァンク達に、先程は強がり半分で赤い花火をあげたものの、本当にとりあえず差し迫って危害を加える気はなさそうだと判断すれば、ポニーテールとローブの裾を絞りつつくしゃみをひとつ。それを見ていたうちの一頭がおずおずとビビに近づいて、寝床にしているらしい敷き藁を差し出してくれるのに何気なくお礼を伝えれば、嬉し恥ずかしといった様子で顔を隠した前脚の、真新しいやけどの跡から自分の魔素を感じて瞬きを。どうやらこの個体は先程下流でビビを受け止めた個体らしい、やけどの跡はその時の魔法の花火がかすったのだろう。一種のストックホルム症候群といわれればそれまでだが、申し訳なさを感じてその前脚に手を当て軽く治療してやれば、当の本獣は嬉しそうにその場でぐるぐると回りだし、遠巻きに見ていた連中も羨ましそうにいなないたり、期待の眼差しと共に魚やら野花やらをビビに差し出して来たりと、巣の中全体が上を下への大騒ぎとなって。違いといえば人間が魔獣に代わっただけで、大いに見覚えのある光景に、段々状況の把握ができて来ると思わず小さく吹き出して。──あんまり悪い子達じゃなさそうね、という感想は後程船員たちに大いに渋い顔で否定されることになるわけだが、いつまでもここにいるわけにもいかないだろう。どうやって状況を治めようかと苦笑しつつ首をかしげたところで、にわかに巣の外が騒がしくなる。見張りのアーヴァンクが下流で対峙した時の様なおぞましい鳴き声をあげ、周りの数頭がビビを守るように覆いかぶさるのに、半ば押しつぶされる形で流木に押し付けられれば、自らも状況を把握しようと顔をあげて。 )
( / こちらこそご丁寧なお返事ありがとうございます。こちらの悩みをくみ取っていただいた素敵なご提案に、なんとお礼を申し上げればよろしいか……いつも本当にありがとうございます。至らないどころか、これ以上なく素晴らしい背後様の細やかなお気遣いのおかげで、大変楽しませていただいております。
「カレトヴルッフの優秀な冒険者」としての二人が活躍する新ストーリー、考えるだけで非常に楽しみです!以前お話させていただいた、ギデオン様の若気の至りがバレるストーリーについて、すこしだけ考えていた展開がございまして、もしかしたらうまく同時進行できそうなので、少々お時間いただいてもよろしいでしょうか。これまた長文になりそうでして、この返信と一緒に乗せるとまた数日返信が遅れそうですので、まとめ終わりましたら後程伝えさせてください。勿論、ギデオン様の過去が関わる展開ですので、今背後様の方で検討されている展開があれば是非お聞かせください。
くどいようですが重ね重ね本当にお世話になっております。引き続きどうぞよろしくお願いします。 )
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