匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(何か懸念でもあるのだろうか、と、何ら疑わずに身を屈めたのは、ここ二週間密に接してきたこのヒーラーが、非常に鋭い着眼点の持ち主であると知っていたからで。至って真面目に寄せたその横顔にはしかし、柔くしたたかな唇が、ふわりと軽く触れられる。何が起きたのかすぐには理解が追いつかず、瞬きしながら立ち尽くすも、どうにか相手に目を向けたときには、殺し文句まで落としながら既に軽やかに逃げられた後。「…………、」と言葉もなく相手を見送っていたギデオンの背に、「そういう関係なら最初からそうと言っとけよ……」と恨みがましい声がのしかかり、ぴくりと振り返る。そこにはたまたま居合わせたらしい四人の船乗りたちの姿。グールのようなおどろおどろしい目つきをギデオンに向ける者、収穫を取り落とし灰になったように虚ろな表情で固まる者、そんな仲間を見てげらげら笑い転げる者と三者三様だが、「誤解だ」と力なく否定するギデオンには、口笛を吹いた男から「ほざきよる!」と乱暴な野次が飛ばされる始末。……いや、本当に誤解なのだと、そんな関係にあるわけじゃないと。今度は自分自身に注意深く言い聞かせながら、頬にまだ残る感触を忘れ去るべく、無理やり気持ちを切り替え定位置へ向かうことにして。──その後、主に約二名の船乗りによる異常に猛烈な投擲の甲斐あって、テッポウブドウの奇襲工作は開幕してすぐ華々しい戦果を上げた。たかが植物の自爆反応だが、それでも威力は充分だったようだ。強固に組まれたダムが徐々に打ち壊されるにつれて、堰き止められていた白い水流が一筋ずつ解き放たれ、一部の船乗りの水魔法によってギデオンをしっかり避けながらも、下流の勢いをしっかりと取り戻していく。当然、これに怒って飛び出してきたのはダムの主である青黒い魔獣、アーヴァンクだ。下流にただひとり佇むギデオンを敵と見定め、巨大な牙を剥いて襲い掛かってくるが、いくつも支援を得たギデオンは既に魔剣を構えた姿。ドッと全体重をぶつけてくるモンスターを剣身でしっかり受け止め、川床に叩きつけるようにして斬り伏せる。なかなかどうして、シルクタウンで対峙したワーウルフ並みに厄介な凶暴さだ、それでも捌けない相手ではない。怒り狂う猛獣を一頭、また一頭と確実に倒し、ヴィヴィアンの巧みな閃光弾にも幾度となく助けられていたのだが──程なくして、事件が起こった。知能が高いアーヴァンクは、ギデオンが強力な後方支援を得ていることに気が付いたらしい。ならばその元を断とうと、崩れ行くダムの上から辺りを見回して──十頭が十頭、まるで雷に撃たれたように、盛大におののきながらびしりと固まった。何事かと奴らを注視してみれば、何故だかやけに、人間並みに表情豊かに……まるで女神の降臨を見たかの如く、夢見心地な顔つきに変わって見えるのは気のせいか。突然攻撃する気配のなくなった魔獣が不可解な様子を見せるので、顔の汗を手の甲で拭いながら(なんだ……?)と眺めていたのが、ギデオンの最大の油断。次の瞬間、いきなり統率の取れた動きで散らばった魔獣たちは、ヴィヴィアンの立っていた大岩のそばに泳いでいったかと思うと、根元から丸ごと、ものすごい勢いでひっくり返した。そうして大きく宙に浮き、落ちていく華奢な体を、ラッコ宜しく仰向きに浮かんだ一頭が、ダムの上流地点でしっかり抱き留め、大きな腕の中に捕えて。他の九頭が護衛のようにざっと周りを囲んだかと思うと、凄まじい水しぶきを上げ、一気にどこかへと退避し始める──あまりに突飛な事態に、致命的な後れを取ってしまった。アーヴァンクは人肉を食らうという、まさか若い雌であるヴィヴィアンに目をつけ、上流にあるダム湖のどこかの巣に連れ込んで皆の兵糧にするつもりか。ぞっと冷える思いをして、本気の焦りが滲む声で相手の名を大きく叫ぶと。船乗りに命じて運河の水を更に避けさせ、自分もダムを駆け上り。後に続く、こちらも必死の様子の船乗りたちに湖水を無理やり避けさせながら、遠くなる姿をもどかしい思いで追いかけて。)
────ッ、ヴィヴィアン、ヴィヴィアン!!
(/ご丁寧なお返事をありがとうございます。以下の一点のみ、緩めの相談事項となっております。
相手の前だからこそ、本来意図する在り様とは違った姿ばかりを見せがち……というのはギデオンもまた同じですので、その辺りについて不安は一切ございません、ご安心くださいませ! そうしましたらひとつ提案で、今の話がひと段落ついた後、「カレトヴルッフの有能な冒険者」としての二人の活躍がメインとなる新ストーリーに入るのは如何でしょうか。花火デートの際に関係性をしっかり深めたことですし、「依然猛アタックするビビと、それを狡くかわしつつクソデカ感情を拗らせるギデオン」という基本要素はもちろんしっかり外さぬまま、互いの本来のかっこよさを存分に発揮できればと。そこで冒険者としての相手への信頼を再強化した後で、また甘酸っぱい雰囲気(いつぞや主様とお話した、「ずっと暖簾に腕押しだと思って油断していたビビ相手に、ギデオンが不意打ち気味にクソデカ感情を発露して周囲共々戸惑わせる」といった要素など)を堪能する……といった緩急をつけられたら、程良いメリハリになるのではないかと思っております。決定を急ぐような話ではありませんが、各キャラクターの性格描写の悩みを解決する案としてご検討いただけると幸いです。また、現時点で具体的なバックストーリーを思いついているわけではありませんので、その辺りも主様側で何かイメージが湧いた場合、是非ご共有くださいませ。
以下に関しては、ざっくりとお返事なので読み流していただいて大丈夫です。
展開についての誘導もありがとうございました。お言葉に甘えて、かなり強引ではありますが展開を進めさせていただきました。本来、敵意あるモンスター相手ならビビは決して後れを取らないと思うのですが、ビビ相手には敵意どころか好意しかないアーヴァンクたちだからこそ不意を突かれた、というようなことにしていただければ……! また、毎度長文になってしまっておりますが、文量や展開の進み具合など含め、主様がご無理をなさらず楽しく綴れる範囲で、お好きなように続けてくだされば幸いです。
返信速度についても把握いたしました! 迷惑とは全く感じておりませんが、ひとえに主様の身が心配でしたので、余裕を設けるとのお話に大きく安心しております。是非のびのび休息できる時間を確保してくださいませ……! この物語が大好きだからこそ、自分の至らぬ点の多さを反省する日々を送っておりますが、それでもこうして主様とのご縁を続けさせていただけること、背後にとってはこの上ない幸福です。このため、こちらは変わりなく返信するかと思いますが、急かしたり強要したりする意図は同様に全くございませんので、どうかお気遣いなく。いつも本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。)
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