匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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……どうせ一晩かそこらで済む予定の宿泊だ、まともな休みならキングストンに帰ってからでも充分間に合う。
(ギデオンの言葉を聞くなり、サーペントのような素早い身のこなしでやってきて、絶対に通しませんよと強情に立ちはだかる相手。そうは言っても、同室でシャワーを済ませるのは流石にこう、いろいろとダメだろうと、ギデオンもぐっと譲らない。それがますます相手の心配を煽り立てるとも知らずに言い返し、共に危険を乗り越えた相棒同士でありながら、しばし相手を睨み合う奇妙な時間が続いたのだが。はっと表情を変えた相手が言い放つ頓珍漢な台詞、それにまるまる虚をつかれたような顔をしてから、思わずがくりと脱力してしまって。──毒気を抜かれたというか、なんというか。よく飽きもせず自分に構いつけているなとは常々感じているが、勿論そんないかがわしい真似をするような人間だなんて思っちゃいない、そんな心配はしなくていい。年頃の女性としてむしろこちらのほうを警戒してくれ、と言いたいのが山々だったが、それをわざわざ口に出す気力もないほどあらゆる意味で疲れていたのも事実で。数秒の沈黙の後に深々とため息をつき、「……わかった」と根負けした一言を。ただ、見知らぬ男たちのひしめく宿にいきなり泊まることになったとあって、相手の身の安全が心配だ。姿勢を直し浴室の方に足を向けるが、念の為、と注意事項をいくつか。それだけ伝えてしまえば、「……ありがたく頂いてくる」と、言葉に反し渋々といった様子で浴室に入っていき。)
……女将の人柄的にないとは思うが。自分たちの宿に上手いこと誘い込んで、無防備な夜中に客を襲う悪質な宿も珍しくない。部屋の外には行かなくていいから、窓辺や来客には気をつけてくれ。
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