匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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人が気にしてるの知っててそういうこと言います!?
( これまでのギデオンは、ビビのアタックに困惑の表情を浮かべつつ、誤魔化し受け流すばかりだったはずだ。──こんな、意地悪い笑みを浮かべるような人だっただろうか。あの医務室以前のビビならば『ビールでも酔っちゃったら、家までおくってくれます?』なんてギデオンの腕に縋り付いたかもしれないが、爽やかな甘さの中に抗い難い色気の滲む表情に一瞬見とれては、いつもと違うギデオンの様子に、これからされるだろう話を予感して緊張がぶり返し。林檎のように頬を染め、色気のない抗議に両の拳を握りポニーテールを揺らすのが精一杯。その上、勝手な気まずさから救世主となってくれるかと思われた少年が、ビビの細腕をスルーして、ギデオンに全てを纏めた紙袋を持たせて「女の子には花より重いもんは持たせねえ主義なんだ」と、普段であればこれ以上なく愛くるしく感じられるキメ顔を披露してくれたものだから、益々やり場のなくなった手を彷徨わせる羽目になり。そこへギデオンから袖を示唆するさり気ない追い打ちまで心臓に喰らえば、恥ずかしさからくるキャパオーバーに眉尻を下げ、袖を掴んだ指は行きよりずっと控えめで。暫くは東広場とは違う方向へ進んでいることに気づく余裕もなく、静かにギデオンの後ろを歩いていたが、仕事に関する雑談を振られれば露骨に安心した表情を浮かべて顔を上げ。 )
本当に!こんな日を狙うなんて許せないですよ!
……怪我の方は、良かったって言ったらダメですけど、重症の方はいなくて、
( そうして、楽しい祭りに水を指す無粋な犯人に、素直な怒りを表すまでは元気が良かったものの、一瞬言葉を考えるように黙り込めば、眉間に寄せた皺が怒りから不安げなものに変わる。犯人を捉えて安心したのもつかの間、建国祭の期間限定で立てられた救護テントは、巻き込まれた一般の負傷者達で溢れかえっていた。事件の社会的な始末におわれるギデオンの一方で、ビビは後輩のヒーラー数名と、傍で手持ち無沙汰になっていたバルガスを力仕事要因に引き連れてテントに向かっていた。不幸中の幸いで命や後遺症に関わるような怪我をした者はいなかったが、冒険者たちと比べて非常時や怪我になれていない市民たちの空気は最悪で。常々、被害者たちの恨みの矛先は、加害者よりも、助けた人間に向かい易い。お前らの警備が甘かったせいで、こんな事件を見逃すなんて!と、決して気分の良いものでは無いが、ヒーラーとして3年目を迎えれば、ビビにとってはとっくに慣れた叱責も、冒険者達の中で守られ感謝される経験の方が多い新人ヒーラー達には辛い。どんどん顔色の悪くなる後輩たちを、何とか鼓舞しながら治療に当たっていたものの、逃げる人に押されて腰痛を悪化させた老夫に、受付のリザが突き飛ばされたのを見て、責任感の強いバルガスがとうとうキレてしまった。基本的に前線で立ち回る彼は、自分の活躍は周りの支援のお陰だとヒーラーや、事務方の構成員を非常に大切にする。しかし、今回はそれが最悪なタイミングで発揮されてしまい。今にも老夫を捻り上げ兼ねない彼を宥めすかして、別の部所の応援に出している間、ビビなしで働いてくれた新人達の心労は如何程だったろう。明日以降の精神的なフォローを考えて深い溜息をつけば、ビビに惚れていることが公然となっている男の名を漏らしたのは、そういった事情で。 )
どっちかと言うと、皆の方が心配です。
特にバルガスはすごく落ち込んでたから……泣いてないといいけど。
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