匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( その否定は何に対する否定なのか。ふと上げた視線に飛び込んで来たのは、夏の陽気を全く感じさせない無色の頬。形の良い唇もどこか白ずんで、どんなにビビが迫ってもただ厳かに光っていた瞳まで、今は色濃い狼狽に揺れている。──どうしてそんな顔してるんですか。チクリと痛んだ胸に眉をひそめて、思わず相手の名の混じった吐息を漏らせば、事情もわからぬままに励ますように力を込めかけた指が、その寸前でするりと解かれ。指が空をかく虚しさに、小さく息を吸った瞬間。どこか切羽詰まった、けれども真剣な声に呼ばれて、優しく頬へ触れられる。普段のビビならば真っ赤になって逃げ出すところだが、ギデオンの真剣な眼差しに絡め取られて逃げることもできず。ずっと誰かにそう言って欲しかった言葉を、一番言って欲しかった相手から貰えば、そのあまりの都合の良さに身が竦む。二週間前に突き放しておきながら、どうしてこんな、まるでこの気持ちを諦めなくていいと言っているような、残酷なことが言えるのだろう。 )
っなんで──
( 今度は此方から手を重ねて、その温もりから相手に大事にされていることを感じ取れば、まろい頬をじわじわと林檎に染める。相手の行動の矛盾に混乱して、今にも泣き出しそうな表情で口を開くと──その時、背後で上がった悲鳴とざわめきに、影と涙に揺らいでいた瞳へ、一瞬でいつもの理性的な光が取り戻される。職業病で思わず立ち上がってから、ふと名残惜しそうにギデオンを振り返れば、この機を逃して相手はまたビビの追求から逃げ回るのだろうと、諦めたようなギデオンへ何も期待していない笑みを浮かべて。すぐに冷静に自体を把握しようと周りを見回せば、自身の杖に手を添えて )
──っ、今のは……大通りの方ですね。一体なにが……
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