匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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ほう、なるほどな。
(暫くの間、若葉色の目を凝らすようにしてビラを睨んでいた相手。その真剣な横顔がふと意外そうに解けたかと思えば、きりっと覚悟を決めた顔つきになってギデオンにまっすぐ向き直るまでを、こちらはうっすら愉快気な表情で、ただ黙って眺めていた──ちなみにその様子は、密着こそしていないものの傍から見れば立派に良い雰囲気であることを、当人たちだけが未だ知らない。差し出されたビラを受け取れば、まずは相手の賭けた先を確認。地元民であるギデオンはこの手のイベント事情にも多少詳しいのだが、ル・ルーとレオンの名には完全に見覚えがなく、おそらく今年初出場のペアなのだろうと推測できた。となれば、相手はどうやら大博打に出る気のようだ。無謀をからかうように低い声で喉を鳴らすと、己もまた、紙面に落とした青い目を眇め。優勝候補常連組の名を出すのはあまりに無粋、かといって明らかな的外れを選ぶほどいい加減な気持ちで臨むつもりも毛頭ない。彼女が真剣に賭ける以上、こちらもそれなりに考え抜いて選ばねば失礼というものである。結果選ぶのは、毎年ノミネートにこそ届かぬものの安定して好評を得る、槍使いたちの戦士舞踊。「5番にしよう、」ときっぱり告げながら相手にもビラを見せた時には、早くも1番目のグループの演目が始まった。初っ端からサンバ、それも大胆な衣装を身に纏った美女たちの軽快なダンスと来れば、観客席は野太い歓声で早速ヒートアップ。ノリノリで小気味好い手拍子を打つ会場前方を面白そうに眺めながら、「こういうのは久々に観る」とかすかに笑い、相手の貰ってきたケバブサンドの一口目をようやくぱくついて──その美味さに、ちょっとした衝撃を受けた顔をして。二口目、三口目と頬張った後、包みをまじまじと見つめてから、「……これ、どこで貰ってきたやつだ?」と、確かめるように隣に尋ね。)
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