匿名さん 2022-05-05 14:12:04 |
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( 先程の一声とは違い、少し抑えて話してくれている様子の彼をもう一度その目で捉えてみると、感じていた既視感に覚えがあった。学内で見かける時、いつも誰かしらと楽しそうに話している、自分とはまるで正反対の人だ。
そんな人が再度改まって此方に自己紹介し、此方の名前を知りたいと想っていることを正直に話すものだから、思わず少しばかり頬が緩まった。)
俺は、山崎勇人。
…俺と、仲良くなりたい奴なんて初めてだ。可笑しな人だな。
( 朝もやはりそう言っていたのか、と、親しくなりたいの言葉に目を背ければ、鬱陶しい髪を耳にかけ、静かに鞄から講義に使う一式を取り出した。
仕事柄、あまり目立ちたくないのももちろんあるが、それ以前に他人との良好な関係の築き方が分からない。おまけに、自分は彼のように楽しい人間ではないし、気の利いた言葉もかけられない。そんな自分だから、大学3年生にもなって知らない同級生も沢山いるし、話した事ない奴も山ほどいる。
からかい半分で話しかけてくる人はこれまでもいたが、今隣にいる彼からはそのような気配は感じない。
本当に、純粋に仲良くなりたいと思っているのだろうか、と一度下げた視線を再び彼へと向けた。)
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