ごおん、と七つ目の鐘の音が聞こえた時、僕はまだ、錫雨区の廃墟の屋上で立ち尽くしていた。近くには首の折れたビニール傘がぐったりと横たわっている。冷え切った指先が震えぬように、強く拳を握り込む。きっともう会うことは出来ないのだと、頭蓋の隅で諦念が囁いた。その声に必死に耳を欹てていないと、人魚の肉でさえ喰らってしまう気がした。
彼女の暖かい心臓に触れたその感触を、今でも覚えている。
泥水を塗りたくったように濁った空と雲の境界を、一羽の鴉が落ちていった。それを見送ることしか出来ない僕の両足は、ずぶずぶと泥濘んだこの地の底に、膝まで沈み込んでしまっている。閉じた瞼の裏側が、いつか見た銃口と同じ色をしていた。喉の奥に張り付いた溜息は、もうどうやったって吐き出せそうになかった。
君の名前は何だっただろうか。
いや、そもそも僕の名前は?
この夕立に意味はあるのか?
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