とある星の子 2022-03-13 06:54:28 |
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……それでこの処置は、大したもんだろ。
(相好を崩しまくっていたかと思えば突然叫び、身悶えしながらも「ユナちゃんとなら……そういうプレイもまあ……やぶさかでは……」と元気に呻くツンを脇目に、目を見張る。
少なくとも、かつては彼女を指導した師のような星の子がいたのだろう、と思っていた。まさか、完全に単独だったとは。しかも医術を極める目的ですらない。元から抱いている探究心の赴くままやってきて、自然と身につけただけのことらしい。
はにかみながらも慣れた様子で治療を続ける彼女に、初めてかすかな感情を込めた目をやる。口から零れた称賛には、本心の敬意と多少の打算。
自分は活動にさほど熱心なほうではない。だが、星守という集団が目的を果たすにあたり、彼女の才能は欠かせないだろう。先輩たちが、彼女の探究を手助けする──という形でそれとなく彼女を囲い込む──のも、今ならわかる。
自分もそのひと駒くらいにはなろうかという気持ちすら、うっすらと沸いている。それほどに、彼女の自己評価に反してその能力は本物だ。
そんな仄暗い計算を知ってか知らずか、手当てが終わってすっきりした様子のツンが、明るい声で同様に彼女を褒め讃えた。曰く、いや神の御業だ、ユナちゃんは天使だ、女神だ、おかげで俺今ならひと晩中元気だよ、何なら今夜空いてるよどうかな! ……云々。
かと思えば、待ち合わせをしていたフレンドの元へ行く時間になったらしい。「ユナちゃんは俺のこと『ダーリン』って名づければいいよ! オメーは『慰謝料支払い先』な!」そう言ってフレンドになるための白キャンドルを押し付けると、つむじ風のように去っていった。
後に残るのはユナと自分、療養中の雀のみ。欠けたひとりがやたら賑やかな奴だったせいで、余計にしんとしたように感じてしまう。
……困ったことに、彼女と何か話そうにも、自分は元来口下手で、口数が少ないほうだ。誤魔化すように首の後ろを掻きながら、躊躇いがちに話題を探して。)
……うるさかったな。けど、あいつが言ってたことは俺も本当だと思うよ。
大それたことじゃないって言うけど、魔法に手を加えるなんて並の発想じゃない。──もっと、誇るべきだ。
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