とある星の子 2022-03-13 06:54:28 |
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(渡した物資を受け取ったユナは、手際よく処置を進めた。その用意の良さや迷いのない手さばきには、見ていて感心するものがある。
いったいどれほどたくさんの医学書を読み、実践を繰り返してきたのだろう。自分も多少職人気質ななりをしている自覚があるが、どうやらユナも同じようだ。
一方のツンは、まったく別の感想を抱いたらしい。彼女が雀の頭を抱え起こし、優しく薬を飲ませる様子を見て、「こんなん宗教画じゃん……聖母じゃん……」と祈りのポースすらとっていた。よくわからない。
そうして五分ほど見守っただろうか。手厚い看護を受けた雀ははたして、まだ目を覚ましこそしないものの、もう随分と穏やかな息を取り戻していた。彼女の魔法薬は、どうやら本当によく効くようだ。
これで一件落着か……と思った矢先、自分たちに水を向けられ、思わず虚を突かれた顔になった。
「俺今ならおまえのこと許せるよ!!!」と大喜びで椅子に飛んでいったツンはまだしも、こちらのことまで気に掛けられるとは。
言われて自分の両手両足を見下ろせば、確かにそこには、カニの群れに突っ込んだ時の擦り傷や裂傷がちらほら。いずれも軽いものなので気にするほどではないと思っていたが、医者の看護の申し出を前に見過ごすのも良くないだろう。
素直に甘えることにし、自分も中央の座椅子のひとつに腰掛ける。先んじてそうしているツンにならい、彼女が診やすいようケープを脱いで袖や裾を捲り上げつつ、ふと気になって問いを投げかけ。)
……、ありがとうな。いつもこんなことしてるのか……ひとりで。先生とか、手伝いとかがいるわけじゃないのか。
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