逆転恋心 〆

「お待たせ。これハズレのないくじのラストワン賞なんだって。あちこちまわってやっと見つけた上にお小遣い全部つぎ込んだ宝物らしいけど、御剣にこそふさわしいからってもらってほしいって言ってたよ。あと、"未開封美品"だとか。重要らしい言付けと一緒に確かに渡したぞ」
　
助手席の側まで戻ってくるとドアを開いてトノサマンフィギュアと車代の入った紙袋を届け。非常に多忙な上に、無駄を嫌い効率を常に追求する相当な倹約家で知られる彼がわざわざ、しかも決してささやかではない時間と費用を割いて成歩堂と食事をする機会を設けてくれたのにも関わらず真心を汲み取りきれずに御剣を白けさせてしまったことを後悔まじりに反省し。行き場のない気まずさと気恥ずかしさから僅かに伏せた瞳を思案気に揺らしながら力なく、しかし切実に思いの丈を細く長く語り
　
「さっきは悪かったよ。だって今日の御剣すぐ後ろ向きになるから、笑ってほしかったんだ。食事の終盤からおまえずっと同じことの繰り返ししか喋ってないだろ？ああでもしないと話が前に進まないし、謝るのやめてくれないと思って
何よりいつもの隙のない言動と違って今日言葉遣いも度々妙だったし振る舞いも合理と常識を何より大切にするおまえにしては大きくかけ離れてた。まるで御剣じゃないみたいに。心配だぞ
でも立ち入ったことはしたくなかったからね。始終なんて言葉をかけてどう行動すればおまえのためになるかわからなかったんだよ。ぼくがスマートに対応できなかったせいでしょっぱなからもたもたとしちまったな。こっちも大分緊張してたし
　
それでも今日は楽しかった。きっとおまえが心を込めてもてなしてくれたからだね、ありがとう
だからこそ「期待してない」だなんて言葉は寂しかったよ。おまえがどういう意味でそう言ったかはわからないけど、でもそういうやるせない気持ちにさせたのは確実にぼくが不甲斐ないからだよな、ごめん
ぼくは約束は必ず守る。御剣が望んでくれるならまたこっちから連絡するよ。おやすみ」