光梨 2022-03-09 19:01:29 |
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「‥‥‥‥‥‥。
もう!これ以上のお礼なんてもらいすぎだよ!すでにぼくはきみに一生かかっても返しきれない恩を受けてるんだから。
なあ御剣、何がそこまで気にかかるんだ?どうすればぼくの気持ち伝わる?きみにとっても有意義な時間だったならそれでいいじゃないか。
‥‥あ。もしかして。そんなにぼくと離れがたいのかな?」
平生の堂々とした振る舞いとはかけ離れた心許なげな御剣の姿を認めるなり、合理と論理を一分の隙もなく身に纏い一切の迷いを寄せ付けぬようにみえるがその心は非常に繊細であったことを思い出して言葉に詰まり考え込み。自分で蒔いた言い種の数々がそのまま彼の胸の奥底で悩みの種へと変異して次々と発芽し、褒め言葉や励ましをかければかけるほどかえって問題をより根深く大きく育てる肥料や水となって宿り木のように御剣の胸を蝕んでいる現状に途方を失い。策もなく嘘のない気持ちが一番と今まで通りに語りかけ続けていたがふと思い付いて、荒療治とは思いながらも体格のいい男のしなに怖気立って謝罪をおさめてくれたら幸いと、からかい口調で一瞬顔を近付け笑いを誘うべくわざとらしい流し目と猫撫で声を送りすぐに引いていたずらの反応を楽しむように明るい声音をたて。
「怖かった?ごめんね、冗談だよ!
はい、これきみの分。お店を紹介してくれた人と一緒に食べてよ。じゃ真宵ちゃんからの贈り物持ってくるから、ちょっとだけ待っててくれ」
御剣のためにできることを考えてすれ違っているであろう恋人と早く仲直りができるようにと、お節介がすぎるかなと思いつつも先程購入した紙袋を返事も待たずに相手の膝に置くと、扉を開けてもう一つのお土産を手に取り降車して自分の部屋へ駆け出し
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