光梨 2022-03-09 19:01:29 |
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頷きと共に送られた穏やかで知性的な御剣の微笑みに魂が抜かれたように見惚れ、犬が鳴くような鼻にかかった奇声を伴った熱く深いため息が短く漏れ。またもや奇行をおかしてしまったことに気付いて有耶無耶にすべく焦ってかぶりを振り正気を引き戻して食事に取りかかり。フォークを進めながら考えてみれば親友という呼称は成歩堂の一方的な願望であり、御剣にとっては小学生の頃の、しかもほんの短い間机を並べただけの仲であるのに無神経に交際相手について言い及ぶなど立ち入ったことをしてしまったことに申し訳なさでいっぱいいっぱいになり。大好物のりんごがふんだんに使われたドルチェの繊細な味を楽しむ余裕もなく型通りに口の中へ収めていく作業にすまない気持ちがより一層折り重なって。ごちそうさまと礼を述べる暇もなく店員に導かれながらもきびきびと帰り支度をはじめる彼の後を客のたしなみを持ちつつも慌てふためいて追いかけ。店内のパティスリーで日持ちのする手土産を手ばしこく二つ買うと大切そうに抱え相手に続いて助手席に滑り込み、やっとのことで食事と車を回してもらった感謝を示して。眉を曇らせて横顔を窺いながら帰りの道順を辿る途中に懸命に話しかけ
「招待を受けたのにあんまりな態度で傷付けてしまってごめん。けれどさっきから繰り返してるようにぼくはきみに会えて嬉しかったし、おもてなしにも満足してるんだ。本当だよ。何回も素直な気持ち言うの恥ずかしいんだからな‥‥今度同じ言葉出したら次はぼくがきみを連れ回すからね!」
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