光梨 2022-03-09 19:01:29 |
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いつもの皮肉たっぷりの御剣節が出たことにどこか元気がないように見えたこれまでの言動も思い過ごしだろうと安心しかけるも、ふと突然の誘いだったにも関わらずなぜかすでに予約が入っていたことを思い出し。自分の都合がつかなかったらどうするつもりだったのか。店側の事情も考慮せずいきあたりばったりで予約の取り外しをするような無礼なことを平気でできる人間ではないし、互いの予定が合わない可能性を失念するほど精神的に不安定な状態が長く続いているのかもしれないと考え込み。あるいは重要な相談をする相手がいたがその先約が急遽来られなくなったため、彼の友の中からただいまの問題を解剖できそうな人選が急遽なされ自分がかり出されたのかと論理を組み立て。やはり直ちに解決すべき何かしらの事件が起こったのではないかと想像し、前程から硬直したりこころなしか赤くなっている彼の様子も相まってに深刻な色味を帯びた眼差しで再び不安げに見守り。
あちらこちらに思考をめぐらせているうちにいつのまにかコースがプリモ・ピアットまで進んでいたことに心底驚き。あまりの緊張に無意識の間に前菜を口の中に押し込んでしまっていたのだろうかとせっかくの御剣との二人っきりの食事をよく味わって食べられなかったことを悔やんでいると、行儀が悪い食べ方というわけではないもののあの御剣がスプーンを補助にパスタを巻き付ける様子にさらに驚いて。手先が器用ではないことは知っていたが、礼儀作法等の不得手は厳しい訓練をしてでも必ず克服してくる性分である彼のこと。手元も覚束なくなるほど動揺することがあったのだろうと見当をつけ、ずっと心細さを秘めて気丈に振る舞っていたのではと想像し胸を痛め。可能な限り気を配って言葉を選び声色を整えつつも核心に迫るべく単刀直入に問いかけて
「御剣そんなにデザート楽しみ?待ちきれないならすぐに本題を解決しようか。
‥‥相談があるの、実はお前の方なんだろ。だから今日ぼくをここに誘った。そうだよな?」
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