三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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(なんだか、セシルといると調子が狂ってばかりだな。素直かと思えば突拍子もない行動をする、こういう奴を天才肌だと言うんだろうな)
大人しく校長の話を聞きながらも、ぼんやりと考えるのは彼のことだ。なにせ、今まで見たことがないタイプの人間で、今日一日でもこれまで生きてきた数年分の驚きに見舞われた。校長から視線を外してちらりと彼を見れば、マフラーを口元が隠れるぐらいまで押し上げている。寒いのか、あるいは口元を見られたくないのか。フランクなくせにミステリアス、独特の雰囲気を纏っている彼のことをもう少し知りたいと思うのは、友達だと認めているからだ。
(この後は寮まで案内されて、部屋割りか。時間的に部屋の荷物を整理すればすぐに就寝時間だろうな。明日から授業、寝る前に予定を確認しておかないと)
校長先生が話すこの後の予定を聞けばテキパキと段取りを付けて、改めて教材と時間割の確認をしようと考えていれば、どうやら校長の話は終わったらしい。部屋まで戻れば自由だろう、散策はできないだろうが。そう考えながら立ち上がろうとすると、頭上から大きな音が聞こえた。
「!?」
ぎょっとして見上げれば、人間が何人積み上がっても手が届かなさそうなほどの高い天井いっぱいに、色とりどりの火花が煌めく。教員たちからの歓迎の印として魔法で打ち上げられた花火が、次々と咲いては消えていく。一つ一つの命は短いのに、埋めるように咲き誇るせいで儚さとは無縁だった。
「セシル、すごいな!オレ、花火なんて初めて見たよ!」
生徒たちが大きな拍手をして歓喜する中で、オレもキラキラと目を輝かせると飾らない笑顔を浮かべながら興奮気味にセシルへと話し掛けて。祭りやパレードには行ったことがないので初めての経験だったが、光の洪水とも言うべき苛烈ながらも美しい光景に、たかが11歳の子供にはしゃくなと言う方が無理なようで、オレも結局外面を取り繕いきれずに子供らしさを晒して。
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