三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「うおっ!?」
飛びつかれてバランスを崩しかけるも、そこまで筋力皆無というわけではないのでしっかりと踏ん張って。とはいえすっかりと余裕は剥がれ落ちて、年相応な驚き顔に染まってしまっているのだが。
「ははっ、喜びすぎだろう。……まぁ、オレも嬉しくないって言ったら嘘になるが」
引き剥がさずに受け入れている時点で、オレはオレ自身が思っているよりもセシルに絆されてしまっているのかもしれない。いやしかし、仕方ないだろうと誰にともなく言い訳してみる。身分や上下関係を意識せずに出来た初めての対等な友達なのだから、仕方がない。ちなみに後半の言葉は、心の内に留めておくつもりだったがポロリと出てしまったものだ。声量は大きくないのでセシルにしか聞こえていないだろうが。
(父様に知られたら、怒られるだろうな。付き合う相手は選べ、決して他者に気を許すな、セントリックの血縁以外は敵だと思え。耳にタコができるほどに聞いた小言だ。ちょろいのはオレ自身もなんとなく気が付いてはいるが、家の監視がないホグワーツぐらいは好きにしたっていいだろう)
厳格な父は、たとえ純血であろうとも身分の低い者と付き合いを持つことを許してはくれない。その抑圧で、早い話が"普通"に憧れている節がどうしてもオレにはあった。……セシルそのものが普通かどうかは置いておくとして、対等な友達はまさしく普通の学生のものだった。密かに憧れていたから、こんなにも早く絆されてしまったのだろう。
『貴方たち、いきなり減点なんて冗談じゃないわよ?ほら、先生のお話が始まるから離れて離れて』
「うぇ…!?し、失礼しました!」
監督生に注意されて我に帰れば、校長先生は既に壇上へと登っていた。気恥ずかしくなり、耳を真っ赤にすると慌ててセシルから離れて、勢いよく椅子に腰掛けて。
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