三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「ん、ああそうだな」
(あっっっっっぶない!よかった、上手く転んでくれてよかった!兄様ならもっとスマートにできたんだろうが、オレにとってはこれが限界だ!!)
余裕泰然としてセシルと握手をしながらも、内心ではアドレナリンが切れたことにより冷や汗かきまくりだった。元々こんな目立つつもりはなかったし、なんなら綱渡りなんて毛頭する気もなかった。リスクはなるべく捨てて、安定した日常を送るつもりでいたのだ。今回、上手いこと大衆の思考が固定される前に先制できたのが功を奏したのか、万全とは言えないがそこそこ良い収まり方に導けた気がする。とはいえ、これが失敗してなんだコイツ?と軽蔑される未来も有り得た。普段は隙がないように取り繕っているので意外に思われるかもしれないが、オレは案外小心者である。勢いがあったからできただけで、今は背中に冷や汗が伝うぐらいには肝が据わっていない。ここで挙動不審になればまず間違いなく怪訝な目が向けられるので平然としているが、少々ぎこちなく言葉少なになってしまったセシルへの返答が、精々の違和感だろうか。
「こら、それ以上先生方を煽るな煽るな。部屋割りは──どうなんだろうな?」
先生方への挑発とも取られないようなセシルの言動にヒヤリとしながらも諌めようと試みて、部屋割りのことを聞かれれば顎に手を当てて同じように首を傾げる。そして、くるりとその場で後ろを向けば、一つ飛ばしの席に座っていた女性の監督生に問い掛けて。"P"のバッジを付けているから、それさえ知っていれば監督生が誰かを見破ることは簡単だ。
『何人の生徒が寮に入るかわからないから、組み分けされた順で配属するの。もう組み分けも終わったみたいだし、校長先生が締めの挨拶をすれば早速寮の案内に移るわ。貴方たちはそうね、最後に分けられたし、嫌でも同室になるでしょうね』
「ありがとうございます。だってさ、セシル。嫌でも同室になるかもだと」
苦笑しながら答える監督生に礼を言えば、同じく苦笑いを浮かべながらセシルに振り返り。いよいよ奇妙な縁を感じてきたところで、もう組み分けされる生徒もいなくなれば校長先生が最後の挨拶に移るようで。
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