三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
通報 |
「こら、照れてるなどといちいち指摘するなっ!セシル、君は随分といい性格をしてるじゃないか。少し、そう少し気を抜いてしまっただけだ!」
思ったよりも揶揄い好きな性格に、褒め上手なだけかと思っていたオレには予想外で、ぐぬぬと唸りながら負け惜しみじみた言葉を言うことしかできなかった。やはり人間は一枚岩ではない、誰しも違う側面を持っているものだ。普段は翻弄されるのを嫌うオレが恥ずかしがれども嫌な気分になっていないのは、彼の新たな一面を発見できたことが嬉しいからだろうか。
(嬉しいなんて、まだ友達でもないくせに……。でも、不思議と嫌いではない)
自分で思っていたよりもオレはセシル・クレスウェルという少年を好ましく感じているのかもしれない。家では同年代の者などおらず、こうして同い歳と関われるのが新鮮だというのも一因だろうか。耳に感情が出がちだなんて誰にも指摘されずに来たので知らないまま、ボートへと乗り込み。
「意外に凝った意匠じゃないか。折角のボートなんだ、昼間に乗ることができれば良かったものを。わざわざ夜に拘らずとも良いのにな」
こちらの側にも刻まれている彫刻を見ながら、感心したように褒めてみて。単なる木彫りかと思えば芸術性もあるとは見直した。ホグワーツは思ったよりもそういった遊び心があるのかもしれない。
「さて、もうすぐ組み分けの儀だが。緊張はしてるか?」
間もなく、寮を別ける運命の時間がやってくる。どうにもセシルとは奇妙な縁があるので、実の所スリザリンに振り分けられそうだなという確信に近い思いがあった。──その中に一握りの希望的観測がないと言えば嘘になる。
(セシルと過ごすのも、まぁ悪くないだろうな。ここまで一緒だったんだ、スリザリンに来ればいいのに)
そうしたら宣言通り友達になれる。列車に揺られていた頃はセシルと過ごす日々の想像は浮かばなかったが、今は漠然と多少は楽しめそうだと感じていて。
トピック検索 |