三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「自力で収穫するならそうなるが、まぁオレは別に購入してもいい。材料ならそんなに値は張らないだろう。自主学習がしたいと言って植物学か魔法薬学の先生に頼めば譲ってくれるかもしれないし、直接採りに行く以外にも方法はある。まぁそれでもコストを抑えるためにハナハッカそのもの自体は採取に行ってもいいかもしれないな」
全ての材料を自らの手で集めようとなれば、採取はできなくもないが厳しいだろう。オレ個人としては材料の購入も視野に入れているが、それは財力を持つオレだからできることであって、セシルには厳しいかもしれない。なら他の方法は、譲ってもらうことだろうか。幸いここは学校で、オレたちは生徒だ。授業外学習に取り組みたいという意欲熱心な生徒の申し出を教師が断ることは、中々考えづらいものがある。勿論、莫大な数を揃えるということは無理だがそれは他の方法でも同じこと。なんにせよ、教師に強請る方法も、まぁわりと現実的なのではないのかと思う。
「人間はそういう生き物だからな。優劣もカーストもつけたがるくせに正当化が大好きな生き物なんだ。歴史だってそうやって作られているし、切っても切り離せないものだ。その点はマグルも魔法族もなにに焦点を置くかで違いはないのだろうな。そういう社会の元に生かされているオレがどうのこうの言えることではないが」
セシルの言う通り、野次馬根性丸出しの輩や正義に暴走する人間は非常に多い。それも根本はカースト思考から来ているのだろうが、まぁ振り切ったり正当化したりする存在は良くも悪くも暴走しやすいということだ。その性質はきっと、魔法族もマグルも変わらないものだというのは容易に想像がつく。どちらもカーストや己の信じる正義とやらが大事な生き物だ。……だが、そういう社会の元で今こうして生きているオレがとやかく批判するのもまた冷笑主義という厄介な存在になるのだろう。
「うちは実力主義なんだ……。5代ほど前の当主の代ではそもそも全体的に淘汰行為自体が珍しくなかった時代だし、殺されてもなにも不思議じゃない……。生き物の親がみんな無条件に子供を愛していると思ったら、それは大間違いだって主張するぞ。」
結果的に誇張であればそれはむしろオレの救いにもなるのだが、そうもいかないのが父様だ。あの人は厳格で、家族繋がりの情状酌量など一切期待ができない人物だ。オレは詳しく知らないが、実の兄弟と苛烈な当主争いを繰り広げて文字通り手段を選ばない成り上がり方でその座を勝ち取ったのだとか、そういう噂も使用人の間ではされていたことがある。犯罪は露呈しなければ罪ではないし、知られても口を封じれば無かったことと同義である。実際のところどこまでが本当の話なのかは知らないし、知りたいとも思わないが、まぁ普段の父様を見ていたらあながち事実無根と断言できないのもまた真実で。とにかく、ざっくり言えばとても怖い人である。
「いや、大丈夫だ。喉乾いたらアグアメンティするからな。セシルも喉乾いたら言うんだぞ」
多少息切れしたとはいえまだ体力には余裕がある。喉が渇いたらアグアメンティでもすればいいだろう、無言呪文でとはいかないが、幸い使える。
「むしろ先生じゃなかったら、それはそれで問題だが…。いやでも、学校で飼育されているなら人目にもつくだろうし、危害を加えるだとかそんなことは……。虐待なんて、隠れて飼っているでもない限りできるような環境ではないと思うんだが」
恐らく大人だ、あれが教員でなかったのならば侵入者となるが、それはまた別の方向で大事となる。わざわざ魔法生物を連れ込むとも考えにくいのでやはり教員と見て間違いはなさそうな気はするが、だとしたらこの子たちも飼育されている魔法生物なはずだ。一人がずっと担当して誰の目にも触れないなんてことはないだろう、なにか酷い行いをしているのならとっくに問題になっていたっておかしくはない……と思う。しかし、ニフラーたちは元いた場所に戻されるのは嫌がっている様子だ。セシルが聞いただけでも過剰に反応している。どちらとも断定できない状況に、オレは首を捻り。
「考えすぎなくらいで丁度いい…とは思うが、この子達に関してはオレもなんとも言えないな…。どのみち、戻しに行くにしても見つかるリスクはあるし、連れてきてしまった以上下手に置いていくこともまずい。とりあえず連れたまま、図書館に入れるか試すか?」
図書館は目と鼻の先、戻るのも置いていくのもできないとなれば一先ず連れたままでいるしかない。しかし廊下で立ち往生していれば目立ってしまう。鍵はかかっているだろうが、アロホモラで開けられるか試してみよう。そう考え、図書館とプレートに書かれた扉を指さして。
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